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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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タグ:井上靖 ( 5 ) タグの人気記事

夏至――『六月』

夏至……太陽が天球上で夏至点に達し、北半球の昼の長さが一年で一番長く、夜が一番短くなる日。
北回帰線上の観測者から見ると 夏至の日の太陽は、正午に天頂を通過する 。

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〈海の青が薄くなると、それだけ、空の青が濃くなってゆく。
 街に青のスーツが目立ってくる。それに従って、山野の青が消えてゆくのだ。
 六月――、移動する青の一族。その隊列を横切るために、私は旅に出なければならぬ。〉
『井上靖全詩集』より
by bookrium | 2014-06-21 00:54 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

雨水――『雪』

雨水……雪溶けて雨水ぬるむ。もう雪は降りません、降るなら雨。積もった雪も溶け始めます。

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〈ラジオは、裏日本一帯の猛吹雪を報じている。陸奥湾にも、能登半島の海岸にも、東尋坊のきりぎしにも、いま、雪はしんしんと降っているのだ。細長い日本の国の半分の、大きい家にも、小さい家にも、草にも、木にも、ラッセル車にも、雪はこやみなく降っているのだ。
 こんな晩、ぼくはいつも想像する、どこかの海峡の底ふかく、真赤な花が、美しくひらいているのを。この雪の下にひれふしたあらゆるもののこころが、そこで一つにかたまって、じっと堪え、忍び、春を待っているのを。〉『井上靖全詩集』新潮文庫

by BOOKRIUM | 2014-02-19 18:29 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

大暑――『海』

大暑……暑気が至り一年で最も暑い「酷暑」の時期。

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〈一枚の紺の大きい布を白いレースが縁どっている。――海。〉井上靖「詩三題 海」



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by bookrium | 2013-07-23 20:07 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

千個の海のかけらが

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〈千本の松の間に千個の海のかけらが挟まっていた。少年の日、私は毎日それを一つずつ食べて育った。〉
井上靖「詩三題 千本浜」
by bookrium | 2013-01-24 21:30 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

井上靖と「雪」

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〈 ――雪が降って来た。
  ――鉛筆の字が濃くなった。

 こういう二行の少年の詩を読んだことがある。十何年も昔のこと、「キリン」という童詩雑誌でみつけた詩だ。雪が降って来ると、私はいつもこの詩のことを思い出す。ああ、いま、小学校の教室という教室で、子供たちの書く鉛筆の字が濃くなりつつあるのだ、と。この思いはちょっと類のないほど豊饒で冷厳だ。勤勉、真摯、調和、そんなものともどこかで関係を持っている。〉



新潮文庫『井上靖全詩集』に入っている「雪」。高校生の時に岡井隆さんが紹介しているのを読んで以来、冬が来ると思い出します。
谷内六郎の描く子どもたちが、教室で白いノートの字が濃くなる様子がいつも浮かびます。

「キリン」は井上靖が出版編集に情熱を傾けた雑誌。

文庫の最後に収録されている、最初の詩集『北国』のあとがきに書かれた言葉が印象深いです。


〈私は自分の詩の何篇かがもう一度活字になる運命を持ったことに驚いた。(中略)詩人の多くがそうであるように、私もまた自分自身と、少数の自分を理解してくれるかも知れない人のためにだけ書いて来たのである。〉


〈私はこんど改めてノートを読み返してみて、自分の作品が詩というより、詩を逃げないように閉じ込めてある小さい箱のような気がした。〉



中学2年の時に友人に見せてもらった、たった3行の詩、その出会いから、井上靖は小説家になるまでなってからも、70代になっても詩作を続けています。数は多くなく、ほとんどが散文詩のそれらは、雪溶け水のような清冽な印象を残しました。



 
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by bookrium | 2009-02-04 21:39 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)