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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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<   2010年 01月 ( 6 )   > この月の画像一覧

〈――妙子、海の下はどんなところですか。
 ――おお、きれいですよ、どんなにきれいだか誰も知らないのよ。ときどき、淋しくなるわ……特に、フカが遠くを通るのが見えたりすると。
 ――そんな時は、こわくない?
 ――フカは、海女には寄りつきませんよ。〉

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〈割に早く、七つ島は夕ぐれになった。われわれは妙子と彼女の仲間を家まで送りがてら、小さい港へ引き返した。出発前に、この小さい島のいちばん高い頂きに登った。まもなく日没であった。それで海は、液体の火事のように燃え上がっていた。この島の群れの他の六つの島は、あるものは遠くまたあるものは近くすっかり見渡せて、赤島、大島、竜島、それからまだ他に烏帽子島、荒三子島、狩又島などである。奇妙で、それでいて耳に快い島々の名、そして奇異で、何かしら物哀しい懸崖だ。妙子も、われわれと一緒に登ってきていた。
 ――これ、みんな、私の島です! ここよりもっときれいなところ、ごらんになったことあるんですか。〉

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〈御厨にはほんの一日いただけであったが、われわれはなごりを惜しんでこの島を立ち去った。白いヒゲの、古びたシャツを着ていた古老、伊藤さんよ、さよなら。奈落の底よ、深海の妙子よ、さよなら。親切な海女たちよ、海から生まれた子どもらよ、さよなら。世界中に、こんななつかしい思い出を残す岩礁はたぶんどこにもありはしないだろう。〉


七つ島は、こどもの時から水平線にいつも浮かんでいる。天候や見る場所によって、大きさや数はちがうけれど。きょうはくっきりよく見えるな、とか、たくさん見えるな、とか(この写真はわかりにくい)。
現在は無人島の七つ島は、いつか近くで見れることがあるだろうか。
〈奇異で、何かしら物哀しい懸崖〉という表現が好きだ。昔から眺めている、遠い島によく合う。
七つ島の昔話(巨大ムカデ対美男→白大蛇の戦いとそれを助ける七人)は結構好きな話です(古昔物語集)。



by bookrium | 2010-01-27 15:38 | 読んだ本 | Trackback | Comments(4)

FEELIN' GROOVY

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写真はスターバックスの5年位前の紙袋をブックカバーにしたもの。この柄が好きでずっと捨てられず使い道もなかったのが、ちょうどよいサイズだった。マチを折り畳んだだけでポケットが。ごわごわした紙がいいです。気に入り。
中身は松浦弥太郎『今日もていねいに。』これも好き。

この歌も好き。Simon and Garfunkel 「 The 59th street Bridge Song(Feelln' Groovy)」
聞くと、松浦弥太郎『くちぶえカタログ』の最後にある「旅先で見た町のはなし」を思い出す。
下のは自分の訳。英語は成績よくなかった。しばらくしたら消すかも。

   

 ゆっくり行こう、きみははやすぎるんだ
 朝食も終わったし
 石ころでも蹴りながら
 楽しみをさがして すてきなことを感じてみようよ
 すてきなことを感じてみようよ

 ハロー ランプポスト君、調子はどう
 ぼくは君の花たちが育つのを見にきたんだ
 ぼくのためにいい詩はないかい?
 すてきなことを感じてみようよ
 すてきなことを感じてみようよ

 やるべきことも
 守るべき約束もない
 ぼくはウトウトして眠りそう
 ぼくに朝の花びらを降らしておくれ
 人生、きみを愛しているよ
 すてきなことを感じてみようよ

 ゆっくり行こう、きみははやすぎるんだ
 朝食も終わったし
 石ころでも蹴りながら
 楽しみをさがして すてきなことを感じてみようよ

by bookrium | 2010-01-21 01:32 | | Trackback | Comments(0)

冬の赤い実

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名前がわからない。
ウメモドキかな、とも思いましたが、葉っぱがちがう気がする。
by bookrium | 2010-01-19 01:44 | 奥能登歳時記 | Trackback | Comments(0)
中谷宇吉郎の〈雪は天から送られた手紙である〉も好きだけど、B'zの歌にある〈雪に言葉はない 手紙も届けられない〉というフレーズ(SNOW)も好きです。
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〈生命の世界にも、物質の世界にも、全くおなじ理法が存在しているということは、非常におもしろいことである。そういうことを、べつにおもしろいとも感じない人は、科学の美とは、無縁の人である。そして、ある意味では、幸福な人である。慾望の少ないことが、幸福の一要素であるから。〉

〈この六花状の結晶は、昔からよく知られていて、雪の結晶の代表的な形とされている。(中略)また六角柱の上下に、六花状の結晶がのび出していることもある。横からみると、鼓のような形にみえるので、鼓型の結晶と呼ぶことにしている。
 鼓といっても、これは高さ一ミリくらいの小さな結晶で、おとぎばなしの国の鼓である。もっとも、注意して見れば、肉眼でも、二階建てになっていることが、よくわかる。
 こういう鼓がふるとき、外套の袖をしばらくつき出していると、何百という小人の国の鼓が、しずかに袖の上につもってゆく。雪山の人里はなれたところで、雪の上に腰をおろして、じっとこの鼓を見つめていると、だれの心にも少年の日の夢がよみがえってくる。〉
中谷宇吉郎「誰も生まれないまえから雪は降っていた」


 
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by bookrium | 2010-01-15 15:09 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

寺田寅彦『柿の種』

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〈日常生活の世界と詩歌の世界の境界は、ただ一枚のガラス板で仕切られている。
 このガラスは、初めから曇っていることもある。
 生活の世界のちりによごれて曇っていることもある。
 二つの世界の間の通路としては、通例、ただ小さな狭い穴が一つ明いているだけである。
 しかし、始終ふたつの世界に出入していると、この穴がだんだん大きくなる。
 しかしまた、この穴は、しばらく出入しないでいると、自然にだんだん狭くなって来る。
 ある人は、初めからこの穴の存在を知らないか、また知っていても別にそれを捜そうともしない。
 それは、ガラスが曇っていて、反対の側が見えないためか、あるいは……あまりに忙しいために。
 穴を見つけても通れない人もある。
 それは、あまりからだが肥り過ぎているために……。
 しかし、そんな人でも、病気をしたり、貧乏したりしてやせたために、通り抜けられるようになることはある。
 まれに、きわめてまれに、天の焔を取って来てこの境界のガラス板をすっかり熔かしてしまう人がある。〉
短章 その一(大正九年五月)

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才能、というのはこの最後の行のことなのだろうな、と思う。
〈天の焔〉は、曽野綾子の『星と魚の恋物語』の健次の火が重なります。
『柿の種』は15年位?前に、本木雅弘さんと中野翠さんが紹介していて、興味を持ちました。
「他処行き」の随筆とは違う、〈心の忙(せわ)しくない〉短文。


〈宇宙の秘密が知りたくなった、と思うと、いつのまにか自分は一塊の土くれをつかんでいた。そうして、ふたつの眼がじいっとそれを見つめていた。〉


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by bookrium | 2010-01-11 15:23 | 好きな本 | Trackback | Comments(2)

小寒――『雪』

小寒(しょうかん)……寒さが本格的に厳しくなってくる頃。この日から小寒の季節に入ることを「寒の入り」と呼ぶ。節分までが寒の内。毎年新暦1月6日頃。


〈野田三吉は正月元日の夕方から三日の朝まで、東京高台のホテルに、ひとりかくれて過ごすのが、ここ数年の習わしであった。ホテルには立派な名があるけれども、三吉は幻ホテルと呼んでいる。〉

川端康成『掌の小説』から、「雪」。
三吉の家族も年賀の客も、彼が幻ホテルで本当に幻を見ていることを、知らない。
幻ホテルに泊まる部屋は毎年決まっていて、その部屋を〈雪の間〉と呼ぶのも三吉だけ。
ホテルのカーテンを閉めて部屋に籠り、ベッドに横になっていると、やがて疲労の底から幻が浮かんでくる。

〈目を閉じた闇のなかに、粟つぶほどの小さい光のつぶが、舞い流れはじめる。そのつぶつぶはすき通るように淡い金色である。その金色が白い薄光りに冷えてゆくにつれて、つぶの群れが動く方向も速度もそろって来て、粉雪になる。遠くに降る粉雪に見える。
「今年の正月も粉雪は降ってくれた。」
 (中略)
 もう目をあいてもよろしい。
 三吉が目をあくと、部屋の壁が雪景色になっている。目ぶたのなかの雪は、ただ降り落ちる雪片だけであったが、壁に見えるのは、雪の降る景色である。〉

三吉は粉雪の降る野原に亡き父を見る。父は三つか四つの幼い三吉を抱いている。五十四歳の三吉は、雪景色の中の父に話しかける。
やがて、降りしきるぼたん雪の中に、雪色の大きな翼をもった音のない鳥の群れがゆく。

〈「なんの鳥……? なん羽なんだろう。」
 「鳥ではないの。つばさに乗っているものがお見えにならない?」雪の鳥は答えた。
 「ああ、わかった。」と三吉は言った。
  三吉を愛してくれた女たちが、雪のなかの鳥に乗って来たのである。どの女から先きに話したものか。〉


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by bookrium | 2010-01-05 09:09 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)