〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


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カテゴリ:北陸の作家( 34 )

宮崎孝政の痕跡

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石川県立図書館で借りた、宮崎孝政が生前出した3冊の詩集。大正15年『風』、昭和4年『鯉』、昭和6年『宮崎孝政詩集』。

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『風』を開くと、宮崎孝政の字が。かわいい字です。

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森林社から大正15年9月10日に発行。孝政はその月に、このはじめての詩集を寄贈していました。
序詩は室生犀星。〈すなどりの子、網をもて/かたみに己が寂しさを打たなむ。〉
序文は杉江重英。〈宮崎の詩を讀んでゐると、どこかはげしい彼自身の性格が、想ひ浮かべられて來るやうである。はげしいが、しかしどこかまた物寂しげな様子の、彼自身の姿も想ひ浮かべられて來るやうである。〉

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『鯉』のカット。孝政は大頭だったみたいです。

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鯉社から昭和4年8月7日印刷、9月10日発行。9月2日に寄贈されています。
序詩の「鯉」やっぱりいい。
〈あいつはやがて氷をわるだらう/ あいつが自分の額で/氷をひりひりひきさいてゐる音だ〉

『能登』春号で取り上げた宮崎孝政。もう一度ゆっくり、また読んでみたいなと思っています。






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by BOOKRIUM | 2018-10-20 20:35 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

作次郎のひとり言

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〈私のこのやうな作品は、小説として本格的なものかどうかの論はさし置いて、恐らく今日の時代に於て、非時流なものだらうと思はずに居られない。〉「ひとり言(序に代へて)」

事変以来、戦争小説、国策物が増えてきた中で、便乗することも好むこともなかった加能作次郎。
私小説や心境小説の類は影をひそめた、その代わりに、〈時流的なあまりに時流的な、また、小説的なあまりに小説的な作品が多過ぎるのも事実である。〉

父について、母について、お信さんについて、珠のような小説を書いた。

〈さういう中に、このやうな私の作品集の一冊位はあつても、却つて変つてゐていいかも知れない。〉

昭和16年7月下旬に作次郎は記し、8月5日に急死した。
久しぶりの作品集『乳の匂ひ』の朱を入れた校正刷りが枕元に置かれる。表紙の字を10枚も20枚も下書きした『乳の匂ひ』は、没後すぐに刊行された。

〈矢張り相変らず自分自身の片隅で、自分自身の声に耳を傾けながら、恰も靴屋が靴を作るやうに、こつこつと自分の身に適つた作品の製作に精進してゐる外はなかつた。〉

広津和郎は「美しき作家」で友人加能作次郎について書いている。

〈時流に迷わされる事なく、彼自身の道をとぼりとぼり歩いて来たといへる。〉

〈異常に正直な加能君は、文壇に生きる戦法を知らなかつた。いや、知つてゐたとしてもそんな戦法を彼は取ることが出来なかつた。彼が材料の範囲を拡げずに、みづから狭い範囲にくぎつたのも、恐らく彼のはにかみからに違ひない。〉



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by BOOKRIUM | 2018-09-08 21:48 | 北陸の作家 | Comments(0)

加能作次郎の痕跡

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石川県立図書館に加能作次郎が生前自著を寄贈しているのは、年表を見て知っていました。
大正9年12月博文館発行の『厄年』。25歳から小説を発表して、このころ35歳。写真は大正10年3月の再版。1円80銭。
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ページをめくると、御成婚記念のハンコ。のり付けで誰の御成婚かわからない。
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このページを見て、加能作次郎が確かに生きていたんだな、とうれしくなりました。西海風戸の海や景色、お墓や、生家や、作品に、加能作次郎の世界は生きていますが、〈昭和二年三月十六日 加能作次郎氏寄贈〉という言葉が、42歳の作次郎が石川の人にきっと読んでほしくて自分の出てる本を寄贈したこと、なんだか私も作次郎とつながったみたいで、うれしくなります。

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目次。

連載のために作次郎の本を読みました。

『加能作次郎選集』
『加能作次郎集』
『加能作次郎作品集 一、二』
『世の中へ 乳の匂い』講談社文芸文庫
『石川近代文学全集5』
『日本文学100年の名作 第2巻』
『百年文庫 雪』
青空文庫

被ってないお話は、「発途」「秋の音」「火難」「二階の患者」「醜い女」でした。

没後の選集に入っていないお話はまだまだあると思うので、作次郎の寄贈本を、これからコツコツと読んでいきたいなと思ってます。
作次郎が楽しみにしていたであろう『乳の匂ひ』、亡くなってすぐ牧野書店から出た本は、図書館から借りて読みました。生きていたら、作次郎自身が寄贈したのかもしれません。
フリーペーパー1号で加能作次郎文学碑の除幕式について書きましたが、呼ばれた青野季吉、広津和郎、宇野浩二が語り合う言葉。
忘れられない言葉、忘れたくない言葉です。

「‥‥やつぱり、狭くても、加能の小説は、いいね」

「却つて、ああいふ小説は、殘るね、‥‥」








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by BOOKRIUM | 2018-09-02 20:12 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

藤澤清造の墓参り

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今日は祥月命日なので、七尾市のお寺に藤澤清造のお墓を訪ねました。
静かなお寺に入って、お墓を探そうと思ったら、結構目立つところにありました。お花がないので、西村さんはまだ来てなさそうです。
藤澤清造については、17位の時に石川近代文学全集でその生涯、死因を知ってから、特別な作家です。
最近西村さんの本を集中して読んでるのですが、やっぱり『芝公園六角堂跡』、特に「十二月に泣く」がいいな、と思います。ピュアで、いいです。それまで読んだ拘泥、暴力の身勝手な論理の中で、最後に残されたものが、やっぱり清造しかない。まざまざと、孤独で、無垢で、それが良いとか素晴らしいという訳ではないですが、触れる感じがしました。
清造についていつか文章を書けたらな、と思っています。清造と、「十二月に泣く」。
西村さんの暴力物に喜ぶ人は、清造あんまり興味ないだろなあと思います。西村さんの文章は、とても読みやすいです。dv心理を知ることができるけど、非常にしんどくなります。
清造は、菊池寛に無理矢理下駄を買わせるエピソードが好きです。



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by bookrium | 2018-04-29 19:54 | 北陸の作家 | Comments(0)

江曽

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今日は雪の晴れ間です。また雪が続きます。
天気も良かったので、宮崎孝政のふるさと、七尾市江曽町に行ってきました。

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by bookrium | 2018-02-02 18:18 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

加能作次郎の作品

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昨年10月に訪ねた、加能作次郎のふるさと、志賀町西海風戸の海。

昨年は加能作次郎の図書館で借りやすい本を読み進めました。作次郎の原本以外で。
作品が重なる本とか、作次郎の幾つの時の作品か探しながら、年齢順に読むのが面倒だったので、my年表と作品一覧を手帳に書いてチェックして読みました。

ここでは、作品一覧を載せてみます。
マークは重なるところです。□5、■5、○5、●3、▲3、△2、・1冊になります。講談社文芸文庫が一番代表作を集めています。

『加能作次郎選集』
■恭三の父
▲厄年
・篝火
△汽船
△迷児
□世の中へ
・難船
・祖母
△屍を嘗めた話
・釜
・凧
・平和な村より
・子供の便り
●母
・父の生涯
○乳の匂ひ
・心境

『加能作次郎集』
・海の断章
・能登の西海岸
・能登の女
・海海鼠
・富来祭
・故郷の冬
・漁村賦
・夜撫で
■恭三の父
・一滴の涙
・弱過ぎる
・もどかしい事
・霰の音
・誑され
□世の中へ
○乳の匂ひ
・お鶴と宗吉
・花簪

『加能作次郎作品集 一』
小説
・嘘又
・極樂へ
・大人と子供
・生靈
・海邉の小社
・故郷の人々
・水は流れる
・犬
・猫
随筆
・ひとり言
・回顧
・土を戀ふ

『加能作次郎作品集 二』
・お富とその叔父
・痴惧
・松林の中
・醜き影
・或る夏のこと
・新婚の妻の手紙
・海に關する斷片

『石川近代文学全集 5 加能作次郎・藤沢清造・戸部新十郎』
■恭三の父
▲厄年
△羽織と時計
□世の中へ
・乙女心

『世の中へ 乳の匂い』講談社文芸文庫
■恭三の父
□世の中へ
○乳の匂い
△汽船
△迷児
△屍を嘗めた話
●母
△羽織と時計

『日本文学100年の名作 第2巻 1924-1933 幸福の持参者』新潮文庫
・幸福の持参者

『百年文庫 雪 加能作次郎・耕治人・由起しげ子』
●母

『大東京繁盛記 山手篇』平凡社ライブラリー
△早稲田神楽坂

青空文庫
■恭三の父
・海と少年
○乳の匂い
▲厄年
□世の中へ
△早稲田神楽坂


作次郎の好きな話はいくつもあります。
「世の中へ」「乳の匂い」はもちろん、おばあさんとおじいさんが孫そっちのけで凧をあげる話(凧)とか、継母にいじめられる少女が少しずつお金を貯めて花簪を夢見る話(花簪)とか、父のない子と母のない子が親の再婚で兄妹になり海へ舟を出しふたりで消えてゆく話(お鶴と宗吉)とか、好きな話です。
中でも「父の生涯」は、年代順に作次郎の周りの人たちのこれまでを読んできたので、積み重なって胸に迫り、村で3人しかいなかった文盲の父が作次郎へ書いた手紙に、涙が少し出ました。現代では『加能作次郎選集』にしか入ってないのがとても残念です。
加能作次郎はもっともっと読まれていいと思います。


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by bookrium | 2018-01-03 22:10 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

杉森久英の家

花嫁のれんを見に、七尾の一本杉通りを歩いていたら、ふと気づきました。
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杉森久英が金沢へ行くまで、10歳位まで住んでたんだなぁ、と。
没落士族の出で芸者になった義理の祖母、小学校の教員の母に挟まれていた。
6歳頃、七尾の郡役所の前庭を遊び場にしていたので、郡役所にいた19歳の島田清次郎とニアミスしていた可能性も。

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花嫁のれん館に行きました。
仏間に掛けられた花嫁のれん。
これは裏で、正面は仏壇に向いています。
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by BOOKRIUM | 2016-06-26 20:24 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

ちいさい雪

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〈ちいさい雪がふっています
 ともだちはみんな土の中
 春が来るまで眠ります
 しろの季節です〉
乙脇こえ「ちいさい雪」抜粋
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by bookrium | 2013-02-17 19:58 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

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〈わたしは微笑つてみた
 何気なくふいに
 その女もさうしてみせた
 そのあひだに何年も経つてしまつた〉
室生犀星
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by bookrium | 2013-02-01 00:00 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

千個の海のかけらが

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〈千本の松の間に千個の海のかけらが挟まっていた。少年の日、私は毎日それを一つずつ食べて育った。〉
井上靖「詩三題 千本浜」
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by bookrium | 2013-01-24 21:30 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)