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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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カテゴリ:当世本二十四節気( 57 )

芒種――『蛍に』

芒種……稲や麦など芒のある穀物の種蒔きの時期。蟷螂や蛍が現れ始め、梅の実が黄色くなり始めるころ。

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〈夜は蒼し、
 災は満つ。
 ただ光る
 美しき神。
    (ほうたるよ)〉
 北原白秋「蛍に」抜粋



 
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by bookrium | 2013-06-05 00:00 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
小満……万物が次第に成長して来る頃。

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〈一日が眠りから目を覚ます。
 一日が夜明けの光とともに起き上がる。
 同じように君も目を覚まさなくては。
 同じように君も起きあがらなくては。
 明けたばかりの新しい一日とともに。〉

アリュートの歌 スタン・パディラ編 北山耕平訳『聖なる言の葉』



 

by bookrium | 2013-05-21 21:28 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
立夏……夏の気配が現われて来る頃。

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〈ずっとわたしは待っていた。
 わずかに濡れた
 アスファルトの、この
 夏の匂いを。
 たくさんねがったわけではない。
 ただ、ほんのすこしの涼しさを五官にと。
 季節はやってきた。
 ひびわれた土くれの、
 石の呻きのかなたから。〉

ダヴィデ・マリア・トゥロルド 須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」



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by bookrium | 2013-05-05 19:12 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

穀雨――『雨のあとで』

穀雨……春のあたたかい雨が降り、穀類の芽が伸びて来る頃。

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〈海が体を洗い 心を洗う時
 ぼくらは出会うだろう 海が体を洗い 心を洗う時
 そんな時はいつでも
 ぼくらは出会うだろう
 たとえそこにあなたも
 私も いなくても
 海が体を洗い 心を洗う時
 ぼくらは出会うだろう
 いくつもの雨
 どしゃぶりの
 いくつもの終りない雨のあとで〉
長沢哲夫「雨のあとで」
by bookrium | 2013-04-20 21:33 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

清明――『眼にて云ふ』

清明……桜や草木の花が咲き始め、万物に清朗な気が溢れて来る頃。

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〈どうも間もなく死にさうです
 けれどもなんといゝ風でせう
 もう清明が近いので
 あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに
 きれいな風が来るですな〉
宮澤賢治「眼にて云ふ」抜粋
by bookrium | 2013-04-05 20:47 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

立夏——『月の家族』

立夏(りっか)……太陽の光がいよいよ強くなってきて、夏の気立ちが昇るころ。この日から立秋の前日までが夏。


〈満月など月に一度もあるかないかの不安定な精神生活の中に妹と私は置かれ、私の両親はそれを再生産して暮らしていました。〉

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島尾伸三『月の家族』のあとがきより。

〈ーー冷たくなり死にそうになった私を幾度も救ったと母は言いました。私は死んでもよかったのにと思いましたが口には出しませんでした。後になってからも、あの時に死んでいたら楽だったのにと思うことが幾度もありました。〉
「小さな注射器」

著者は作家島尾敏雄・ミホ夫妻の子供として生まれた。
島尾敏雄の『死の棘』に幾度も出た子供の名前。伸三の娘のしまおまほの本も読んで、これも読みたくなりました。

〈母は病的なまでに心配をするかと思うと、無茶を平気で小さな子どもにもさせるのです。〉


〈私の子どもは幸いにも、私の幼年時代にくらべると、子どもの身ではどうしようもない戦争や家庭が原因の不愉快な思いや苦労は、とても少ないはずです。それからするなら、これくらいの冒険はむしろ、健康な彼女には楽しいのかもしれません。〉
「小さな冒険」

影のある部分と、奄美の〈シマ〉の言葉をまじえた子供時代。
妻と娘という家族を得た著者の、あとがきの言葉がすきです。

〈この小さな暮らしが気にいっています。〉



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by bookrium | 2012-05-05 16:51 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
清明(せいめい)……草木が芽吹き、百花咲き競う時。すがすがしくて、明るいので、こういう名前がつきました。


〈なんだかよくわからないけど、何かを始めてみたいので「新月いわし洞通信」なるものを発行してみることにしました。〉
「一九九六年二月 新月いわし洞通信」

『新月いわし洞通信』という、個人でまとめた、一冊の本があります。
東京での出版社の営業の仕事から、結婚、金沢での書店員のアルバイト、夫の実家である能登での暮し、子育て、書くということ。

「新月いわし洞」さんを知ったのは、このブログのコメント欄に書かれた、ご本人の書き込みでした。
メールマガジンを読み、本を出されていることはHPで知り、一箱古本市でお会いした時に購入しました。
ひとりの女性の十二年の言葉が詰まっています。
ときおり、言葉がむきだされ、はっとさせられます。

村上春樹と河合隼雄の対談集を読んで、

〈「ああ、わたしは心の中に「井戸」を掘りたかったんだ、」〉
「一九九六年十二月 心の中に井戸を掘ること」


〈(前略)もういい加減「今の自分は本当ではない」「本当にやりたいのはこんなことではない」と言うのはやめようと思います。「今の私は本当の私」だし、「私はやりたいこと充分に」やっています。〉
「一九九六年三月 私の「道」を仕事にする方法」


〈小さい頃から、人に向かって、もしくは相手を目の前にして、話をするのが苦手だった。相手が親であれ、姉妹であれ、同級生であれ、私のいいたいことが一〇〇%伝わったためしはなく、いつも話を途中でさえぎられたり、聞き間違えられたり、いつのまにか相手が自分の話を始めたりで、私はいつしか積極的に話すことをあきらめた。
 かといって心の中で考えたり思ったりすることを止めたわけではなかったのだけれど、よくわからない想いや気持ちは名づけられないまま心の深くて暗い押入れの中にどんどんほおり込まれ、ある時それが爆発するまで、私は自分に気持ちがあることさえ忘れていたのではなかっただろうか〉
「二〇〇七年十二月 あとがきにかえて」


この「新月いわし洞」はこの先どんなふうになっていくのだろう、と思います。流動的な未来を感じます。
そして、読むたび、この本のことばは、自分に跳ね返って問われているように感じています。

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by BOOKRIUM | 2012-04-04 00:01 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(2)
啓蟄(けいちつ)……冬ごもりをしていた虫(蟄)が、穴を開いて(啓いて)動き出す日。一雨降るごとに気温があがってゆき、春に近づいていきます。日差しも徐々に暖かくなってきます。


〈この話の主人公は、大そう年をとつた鰐である。〉

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レオポール・ショヴォ原作、山本夏彦翻訳の『年を歴た鰐の話』。

若い頃ピラミッドが建てられるのを見た鰐。
ナイル河の湿気が体にこたえて養生したが、辛抱できずにある日、家族を一匹食べる決心をする。
曾孫をかじっているところを、その母は見つけてしまう。

〈母親はにがい涙を流した。〉

鰐は追放され、十二本の足があるという蛸と友だちになる。

〈「そんなにたくさんの足で、何をするのだ。」
 「普通、足ですることなら何でも出來てよ。鼻や背中だつて掻けるし、歩いたり、泳いだり、魚をつかまえたりしますわ。ホラ、この魚、あげませうか。」〉


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蛸に御馳走してもらい、二匹はぐっすり眠った。〈もし、この蛸を食べたら。〉先に目をさました鰐は、自問自答する。
鰐は毎晩蛸の足を食べた。

〈彼は、彼女の好きな魚をとつて帰つた。彼女を日のあたらない岩かげに移して、つめたい昆布の寝どこの上にのせた。
 彼女は、彼が自分を愛していることを感じて、大そう幸福に眠つた。〉


夜になり、蛸を愛している鰐は、蛸を食べたくてたまらなくなる。

〈彼は彼女を、ほんとうにうまいと思つた。
 けれども、食べ終わるが否や、にがい涙を流した。〉



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by BOOKRIUM | 2012-03-05 12:48 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

雨水――『浅の川暮色』

雨水(うすい)……雪溶けて雨水ぬるむ。もう雪は降りません、降るなら雨。積もった雪も溶け始めます。立春から15、16日後。雪が陽気に溶けて、土中が潤いはじめる頃。


 〈あたしは次郎の提灯に灯がともる少し前の、こんな暮れ方の景色が好き〉


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五木寛之『浅の川暮色』より。
新聞記者の森口守は何十年ぶりかに、かつての勤務地金沢を訪れる。当時の森口は23歳だった。一流新聞のジャーナリストの卵としてだけでなく、新鮮な感覚のシナリオの一本くらい書いて、まわりに示したいという気があった。

〈若かったのだと言えば、それも少しは当っているだろう。だがそれだけではない自分のいやなところが、あの時期に集約されてくっきり現れていたのではあるまいか。大都会では目立たぬ部分が、金沢という古く静かな町を背景にして、なお一層きわ立っていたような気もする。〉

金沢について、金沢にいた頃の自分について、森口は思い出すことに生理的な圧迫を感じる。
空港で支局の若い記者に迎えられ、かつて通った「主計町」の町名が消え、尾張町と名を変えたことを知る。
森口はもうすぐ40になろうとしていた。

〈頭の中であるひとつの名前が、蛍火のようにかすかにともったり消えたりしていた。主計町の次郎、という言葉に結びついたその名前を、彼は本当は思い出したくなかったのである。〉

〈あれは尾張町の次郎なのだ、もう主計町などという町は浅野川のほとりには存在しないのだ。そう自分に言い聞かせると、少し気分が楽だった。(中略)古い町名を消してしまうように、古い記憶もあっさりぬぐいさってしまうことができたらどんなに気楽なことだろう。
 みんな昔の話だ、と、彼は口のなかで呟いた。〉


森口はかつて主計町と呼ばれた町へ、「次郎」へ訪れる。その店は、森口が金沢へ転任した時、歓迎会のような席をもうけてくれた場所だった。

〈森口は靴を脱いで女主人のすすめるままに狭い急な階段をのぼり、廊下の突き当たりの小部屋へ通った。天井は頭がつかえそうに低く、窓も床の間も小振りにできている。森口はその小部屋のどこか湿気をおびたくすんだ匂いをかいだ時、不意に自分がいま北陸の城下町にいるのだな、という実感をおぼえた。
「川の見える座敷のほうは?」
 と、彼は腰をかがめながら女主人にたずねた。
「ええ。あいておりますよ」
「ちょっとのぞかせてくれませんか」
「そういえば。むこうの広い部屋が気に入っていられたわね」
 女主人は小柄な体をのばすようにして立ち上がり、廊下をへだてた座敷のほうへ、さあどうぞ、と手招きした。
「浅野川が見たくてね」〉

夜の浅野川をみつめる森口に、この数十年間、自分の内側に押し込めていた、ある人の名が浮かび上がってくる。

〈柴野みつ、という名がそれだった。それは二十三歳の森口守が、この古い城下町で知ったはじめての女であり、そして十代の娘のひたむきな感情を、彼は青年のエゴイズムからそれほど心痛むこともなく捨て去ったのだった。〉


今、どこでどう生きているのか。
森口はかつてみつとこの座敷から暮れ方の浅野川の流れを見おろしながら話したことを思い出す。


〈あたしは次郎の提灯に灯がともる少し前の、こんな暮れ方の景色が好き、と彼女は言ったのだ。〉


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by BOOKRIUM | 2012-02-19 23:45 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(2)

立春――『立春の卵』

立春(りっしゅん)……旧暦で、この日から春となる。厳しい冬の寒さの中に、ふと春の気配を感じはじめる頃。

〈立春の時に卵が立つという話は、近来にない愉快な話であった。〉

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岩波文庫『中谷宇吉郎随筆集』より。
〈昔から「コロンブスの卵」という諺があるくらいで、世界的の問題であったのが、この日に解決されたわけである。というよりも、立春の時刻に卵が立つというのがもし本統ならば、地球の廻転か何かに今まで知られなかった特異の現象が隠されているのか、あるいは何か卵のもつ生命に秘められた神秘的な力によるということになるであろう。〉

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中谷宇吉郎は外国で卵が立った新聞の記事を読み、〈しかし、どう考えてみても、立春の時に卵が立つという現象の科学的説明は出来そうにもない。〉と疑問を持つ。
〈立春は二十四季節の第一であり、一年の季節の最初の出発点であるから、何か特別の点であって、春さえ立つのだから卵ぐらい立ってもよかろうということになるかもしれない。しかしアメリカの卵はそんなことを知っているわけはなかろう。とにかくこれは大変な事件である。〉

寒さのために卵の内部が安定した説、重心、流動性、科学者たちの説明はどれも一般の人、そして中谷を納得させない。
〈一番肝心なことは、立春の時にも立つが、その外の時にも卵は立つものだよ、とはっきり言い切ってない点である。〉


〈一番厄介な点は、「みなさん。今年はもう駄目だが、来年の立春にお試しになってはいかが」という点である。しかしそういう言葉に怖(おじ)けてはいけないので、立春と関係があるか否かを決めるのが先決問題なのである。それで今日にでもすぐ試してみることが大切な点である。〉


朝新聞を読んだ中谷は早速妻にひとつだけあった卵を持って来させ、食卓で卵を立ててみる。
妻も別の机で立ててみる。
つぎは、ゆでた卵を立ててみる。〈大いに楽しみにして待っていたら、やがて持って来たのは、割れた卵である。「子供が湯から上げしなに落としたもので」という。大いに腹を立てて、早速買いに行って来いと命令した。細君は大分不服だったらしいが、仕方なく出かけて行った。〉
細君は卵二つを買って帰ってきた。〈子供が病気だから是非分けてくれと嘘をついて、やっと買って来たという。大切な実験を中絶させたのだから、それくらいのことは仕方がない。〉
生卵、ゆで卵での検証をする。割ってみて、黄身のサイズも計る。

〈要するに、もっともらしい説明は何も要らないので、卵の形は、あれは昔から立つような形なのである。〉

〈人間の眼に盲点があることは、誰でも知っている。しかし人類にも盲点があることは、余り人は知らないようである。卵が立たないと思うくらいの盲点は、大したことではない。しかしこれと同じようなことが、いろいろな方面にありそうである。そして人間の歴史が、そういう瑣細な盲点のために著しく左右されるようなこともありそうである。〉




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by BOOKRIUM | 2012-02-04 10:50 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)