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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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2019年 08月 19日 ( 1 )

「不思議な鏡」

〈こゝに一つの鏡がありました。もとより鏡の事でありますから、何でもそこに映ります。処が一つ不思議な性質がこの鏡にあるのです。よくよく見ますとこの鏡には美しいもの以外には映らないのです。〉

『民藝』昭和38年2月号の巻頭4頁に掲載された、柳宗悦の遺稿「不思議な鏡」。昭和33年、69歳誕生日の朝に病床で記された。

美しいものをいち早く映し、醜いものが映る余地がない鏡。
たとえば、毎日大勢の人々に会う1人の人。この人は人の悪口を言ったことがなく、話といえば、あの人はこんなよい性質があると言う。

〈さうしてそのよい性質ばかり見つめて悦んでゐます。悪い面には一向気を止めません。さういふ悪い場面が映る場所がその人の心の中にはないかのやうです。〉

不思議な鏡は、醜いものが現れても相手をしない。あるいはこの鏡をいつも美しさが追っている。

何でも映そうとしないこの鏡は、普通の役には立たないかもしれない。

〈 すぐれた茶人といふものは、この眼がこの不思議な鏡の様な働きをしてゐる人ではないかと思います。〉

〈私〉を立てたり、美しいものに固執しては、醜いものが中に入ってくる。

〈例の不思議な鏡が、美しいものを映す刹那には私がありません。〉

〈私の跡が少しでもあれば、鏡は曇つて美しさだけを映すことはなくなるでせう。私はこの鏡の性質についてもつと考へぬき度いのです。〉

美しいものは眼の鏡に色々写るはず、いや、多くの美しいものから取り囲まれている。
もっと当たり前のものにも、たくさん美しいものが現れる。

〈高価なものだけが、又は有名なものだけが眼に映るやうでは、その眼鏡には曇りが来てゐる証拠です。〉

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by BOOKRIUM | 2019-08-19 19:59 | 読んだ本 | Comments(0)