〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

黄鶯睍睆--『原子力と思考』

立春次候・黄鶯睍睆(うぐいすなく)The Nightingale Sings……春告鳥と呼ばれるうぐいすが鳴き始める

c0095492_18403728.jpg

平凡社STANDARD BOOKS 串田孫一『緑の色鉛筆』の末尾に収められた一篇が、「原子力と思考」です。1956年、41歳。

朝の放送で聞いた英国の古い歌。著者が不安について考える時に思い出される楽器の響き。
不安の芽生え。言葉で捉えきれない不安というものは、哲学、心理学、病理学でも、不安そのものはどうなる訳でもなかった。

〈けれども、ビキニの実験以来の僕たちの不安は、多くの虚像を伴った不安とは全く質の異うものである筈である。肉体が破壊され、生命がおびやかされる不安である。〉

事件以来、科学者の説明を他人事のように聞けず、直接交渉にあたる政府のあいまいな無責任な言葉に呆れる。
これらの人々に怒りを示すのは当然だが、その前に自分たちの問題が沢山残っている。
放射能の事件を笑って忘れようとする誘惑。笑いが不安をほぐそうとする。

〈人間は忘却という全く副作用のないらしい薬をのみ下すことによって、逃避をつづけながら、生命を存続させている。〉

〈しかし忘れてはならないものもある。何もかも忘れてしまうのがよいことではない。〉

この本は2016年に出版されました。2011年の放射能事故に、1954年のビキニ水爆実験への言葉が重なり、揺さぶります。
新たな不安、恐怖の実感を正直に味わう。勇気を持ち、意地も張る。

〈そして、これは今の僕たちには実につらい努力なのだが、この不安の中から、人間の善意を信ずることができるような、僅かな光を正確に見届けたいのである。すがりつく糸としてではなく、人類の新しい信頼の道として。〉





[PR]
トラックバックURL : https://bookrium.exblog.jp/tb/29272911
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by bookrium | 2018-02-09 00:00 | 涼風本朝七十二候 | Trackback | Comments(0)