〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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東風解凍--『柿の種』

立春初侯・東風解凍(はるかぜこおりをとく)Spring Winds Thaw the Ice……東から吹く風が厚い氷を解かし始める時季。立春を過ぎて最初に吹く強い南風が春一番。

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〈日常生活の世界と詩歌の世界の境界は、ただ一枚のガラス板で仕切られている。
 このガラスは、初めから曇っていることもある。
 生活の世界のちりによごれて曇っていることもある。
 二つの世界の間の通路としては、通例、ただ小さな狭い穴が一つ明いているだけである。
 しかし、始終ふたつの世界に出入していると、この穴がだんだん大きくなる。
 しかしまた、この穴は、しばらく出入しないでいると、自然にだんだん狭くなって来る。
 ある人は、初めからこの穴の存在を知らないか、また知っていても別にそれを捜そうともしない。
 それは、ガラスが曇っていて、反対の側が見えないためか、あるいは……あまりに忙しいために。
 穴を見つけても通れない人もある。
 それは、あまりからだが肥り過ぎているために……。
 しかし、そんな人でも、病気をしたり、貧乏したりしてやせたために、通り抜けられるようになることはある。
 まれに、きわめてまれに、天の焔を取って来てこの境界のガラス板をすっかり熔かしてしまう人がある。〉

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寺田寅彦の『柿の種』は今までも紹介しています。岩波文庫の最初に収められたこの短文は大好きな文です。以前もこのブログに載せています。
二つの世界を行き来していきたいな、と思います。それは、生活と詩であったり、陶芸と古本であったり、ブログと雑誌であったりします。
ずっと狭くなっていた穴を、広げて通り抜けられるように。
去年は続けられませんでしたが、大正9年に書かれた寅彦のこの文をきっかけに、能登の風景に涼しい風通しのいい本を集めたカテゴリ〈涼風本朝七十二候〉を始めたいと思っています。





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by bookrium | 2018-02-05 12:55 | 涼風本朝七十二候 | Trackback | Comments(0)