〈衣食住が大切なのは疑いようもない事実です。 心はどうでしょう。〉
ちくまプリマー新書の鎌倉幸子『走れ!移動図書館』。
震災後の4月に東北入りし、移動図書館の準備の過程、7月に運行し始めてから仮設住宅での本と人の関わり。阪神・淡路大震災の経験をふまえた「緊急救援時における一〇ヵ条」。
被災した各地の図書館、本屋の被害についても書かれていて、特に陸前高田の図書館の被害に衝撃を受けました。全て本が流失した図書館や、大槌町・野田村の図書館の壊滅状態、職員7人全員死亡または行方不明で壊滅状態・把握不能の陸前高田。図書館の隣には約100人が避難しつつ生存者が3人だった避難所。
仮設住宅で本を必要とする人。それに応えて本を選ぶ人。再開した本屋で本を買うこと。
〈本はチカラがある。そう人は信じているから本はこの世に存在し続けているのではないでしょうか。〉
震災後、石川近代文学館の絵本を集めて送るよびかけを見て、少ないですが預けました。
あの絵本はどこかで読まれて、よろこぶ子がいるだろうかと、時々思っていました。
〈衣食住は、人間が生きる上で必要不可欠であることは疑いようがありません。ただ衣食住は生きるための手段で目的ではありません。
生きる目的を考えるときに、アイディアやアドバイスをくれたり、辛い時にそばにいてくれるのは家族や友人だけではなく、本もその役割を担えます。〉
この本は図書館で出会いました。
移動図書館という活動を知って、この先いつまで続けて、どんなふうになっていくかはわからないですが、本の可能性があって読んでよかったと思います。
鎌倉 幸子
筑摩書房
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