人気ブログランキング |

〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

小寒——『雪の季節が近づくと』

小寒……寒さが本格的に厳しくなってくる頃。この日から小寒の季節に入ることを「寒の入り」と呼ぶ。節分までが寒の内。

c0095492_15065745.jpg


〈そのころは、よく雪がふった。

 雪がふってくると、最初に、

 空が消えてしまう。それから、

 影が、物音が消えてゆく。

 鳥たちが消え、樹木たちが消え、

 往来が消えて、一日が

 ふりつづける雪のむこうに、

 きれいに消え去ってゆくようだった。

 あらゆるものが消え去って、

 朝には、世界がなくなっているかもしれない。

 ふりしきる雪のなかに、もし 

 ずっと立ちつくすと、それきり、

 じぶんもいなくなってしまうという気がした。

 雪がふってくると、

 すぐそこに、彼方があらわれる。

 雪のふりつづく日に、 

 雪の向こう側へいってしまったら、

 途をうしなってしまう。

 もう、大雪はふらなくなった。

 雪けぶる夜の、冬の幽霊たちもいなくなった。 

 それでも、雪の季節が近づくと、

 すぐこの彼方へ静かに消えていった、

 いつのまにかいなくなった人たちのことを、

 ありありと思いだす。

 生きているときは遠かった人たちも、

 死の知らせを聞くと、

 どうしてか近しく、懐かしく思われる。

 そうなのだ。もっとも遠い距離こそが、 

 人と人とをもっとも近づけるのだ。

 いま穏やかな冬の日差しのなかで思い知ること。〉「雪の季節が近づくと」長田弘


トラックバックURL : https://bookrium.exblog.jp/tb/21399552
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by BOOKRIUM | 2014-01-05 15:14 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)