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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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「たまたま地上にぼくは生まれた」「第二の故郷」

 〈たまたま地上に
  ぼくは生まれた
  生きる人間として
  デッサンの中に閉じこもって
  日々が過ぎた
  夜々が過ぎた
  ぼくはああした遊びをみなやってみた
  愛された
  幸せだった
  ぼくはこうした言葉をみな話してみた
  身ぶりを入れ
  わけのわからぬ語を口にして
  それとも無遠慮な質問をして
  地獄にそっくりな地帯で
  ぼくは大地に生み殖やした
  沈黙にうち克つために
  真実のすべてを言いつくすために
  ぼくは涯てしない意識のうちに生きた
  ぼくは逃げた
  そしてぼくは老いた
  ぼくは死んで
  埋葬された〉
ギュスターヴ・ル・クレジオ『愛する大地』(豊崎光一訳)

この詩は昔中島義道の本の冒頭で引用されていて、印象に残ってた。でも覚え違いをしていて、〈愛された/幸せだった〉の後は〈ぼくは死んで/埋葬された〉と続くと思っていた。〈ぼくは逃げた/そしてぼくは老いた〉を忘れていた。
室生犀星の「第二の故郷」を読むと、この詩のことを思い出す。


 〈私が初めて上京したころ
  どの街区を歩いてゐても
  旅にゐるやうな気がして仕方なかつた
   (中略)
  
  五年十年と経つて行つた
  私はたうたう小さい家庭をもち
  妻をもち
  庭にいろいろなものを植ゑた
   (中略)
  故郷の土のしたしみ味はひが
  いつのまにか心にのり移つて来た
  散歩にでても
  したしみが湧いた
  そのうち父を失つた
  それから故郷の家が整理された
  東京がだんだん私をそのころから
  抱きしめてくれた
  麻布の奥をあるいても
  私はこれまでのやうな旅らしい気が失せた
  みな自分と一しよの市街だと
  一つ一つの商店や
  うら町の垣根の花までもが懐かしく感じた

  この都の年中行事にもなれた
  言葉にも
  人情にも
  よい友だちにも
  貧しさにも慣れた
  どこを歩いても嬉しくなつた
  みな自分の町のひとだと思ふと嬉しかつた
   (中略)

  自分がゐるとみな生きていた
  みなふとつた
  どれもこれも永い生活のかたみの光沢(つや)を
  おのがじしに輝き始めた
  庭のものは年年根をはつて行つた
  深い愛すべき根をはつて行つた〉




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by bookrium | 2010-02-23 00:00 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)