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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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秋分――『メッシュ』

秋分(しゅうぶん)……太陽が秋分点に達し、昼と夜の長さがほぼ同じになる日。この日を境に、夜が長くなる。



           〈あなたが

            そうと
            望むなら

            花にも
            鳥にも
            娘にも

            この姿を
            かえたのに
 
            たとえば
            千の
            死体にも〉



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小学館「萩尾望都 Perfect Selection」の『メッシュ』。表紙が白地に銀色の描線できれいな本。
1980年から1984年に発表された、パリを舞台にした連作集のこの漫画が好きです。


贋作画家のミロンはある晩、腕を折られた美しい少年を拾う。金髪に、こめかみが白銀の二毛色(メッシュ)。母親が駆け落ちし、スイスの山奥の寄宿舎に入れられていたが、12歳の時に銀毛が現れ始めると、後妻と娘のいる父親は掌を返した。今まで我が子だと信じていなかった〈メッシュ〉に母親の悪口を吹き込み、心の支えにしていた彼の母親像をずたずたにし、自分の手元に置こうとする父親〈サムソン〉。メッシュは自分の精神を引裂いた父親への復讐――父を殺し、自由になることを考えている。そんなメッシュを見てミロンは考える。

〈あの晩/オレが拾ったのは/なんだったんだろう?
 天使じゃなくて?/悪魔でもなくて……?
 二毛色(メッシュ)の…?/なんて生き物を/拾ったのだろう……?〉
《メッシュ》


ミロンのアパートの居候になったメッシュ。殺し屋の銃を手に入れ、サムソンを撃つが失敗してしまう。〈あいつがいる限りオレは人間にはなれないんだ/一生あいつにおしつぶされつづけるんだ〉〈……どうしてオレは/こんなにひとを憎めるんだ?〉泣きながらそう言うメッシュ。修道院のような寄宿舎で、ただ自分の名前を呼んでくれる、優しい父が来てくれるのを夢見ていた。ミロンは父親の代わりに、メッシュの本当の名前を優しく呼んでやる――〈フランソワーズ〉と。《ルージュ》
無彩色のパリの美しい街に、ためいきのように白い雪が降る。ミロンの描いた偽のユトリロを売りに、郊外のムッシュ・ブランの屋敷へ行ったメッシュたちが巻き込まれる騒動。《ブラン》
番地を間違えてミロンのアパートにやって来た女性ココに頼まれ、公演を手伝うことになったふたり。ミロンは幕の絵を描き、メッシュは死神役をすることに。劇団員たちの人間関係に巻き込まれ、あやまって演出家を殺したと勘違いしたメッシュは街に飛び出してしまう。〈ずっとずっと昔はね/誰かを愛してたような気がするんだけど/でも/あまり昔のことでわすれた……〉自殺しようと夜の街をさまようメッシュは、自分に優しくしてくれたミロンのことを思い出し、手紙を書こうとするが。……《春の骨》
14で家出してパリに来たメッシュがもぐりこんだ裏町の世界。《モンマルトル》
雨夜の公園で悲しそうに歌っていた美しいジュヌヴィエーヴ。女に間違われたメッシュは、はじめての恋をする。《革命》
未婚でミロンを産んだ、亡くなった母の故郷からきた突然の手紙。海のそばの小さな田舎町をひさしぶりに訪ねたミロンと、勝手について来たメッシュ。ミロンに冷たい町の人々。それはミロンの少年時代にあった海難事故のせいで……。《耳をかたむけて》
顔に矢が刺さって星のような跡がある画家のエトゥアールと知り合ったメッシュ。彼のアトリエで天使のモデルのアルバイトをすることになるが。《千の矢》
いつも母に美人の姉と比べられ反発している不良少女ルーと、ひょんなことから出会ったメッシュ。《苦手な人種》
パリのパトロンのパーティーにやって来たドイツのデザイナー・オズと恋人ダーダ。人手が足らずモデルをすることになったメッシュは、オズの学生時代の友人マルラと夫ルシアンの関係に巻き込まれ……。《謝肉祭》
雑誌に載った、オズのモデルをしたメッシュの写真を見て、ある男から電話がかかってきた。メッシュの母親〈マルセリーナ〉の名前を知っていた男。彼ルイードはマルセリーナの再婚相手の息子だった。何もおぼえていない母親が生きていることを知ったメッシュは動揺する。一緒に暮らして1年になるミロンが、メッシュの義母エーメから金を受け取っていたことを知り、喧嘩した勢いでルイードと一緒にマルセリーナに会いに聖モーゼルへ行く。《シュールな愛のリアルな死》


マルセリーナ――マルシェは心を病んでいた。自分の産んだ〈フランソワーズ〉は女の子だと信じていて、メッシュのことをわからない。ルイードはマルシェの心を占める〈フランソワーズ〉に嫉妬し、乱暴してしまおうとかつて不良仲間に言っていた。それにのった男たちがルイードに内緒でメッシュに襲いかかる。

〈だけどあんたたちは娘がほしいんだ
 あんたも/マルシェも/ルビエ氏も/あのパジャンたちも だ
 フランソワーズという娘が
 その名前は母親がつけた
 そしてそのとおりにオレはやってる
 あんたたちの望みどおりにさ
 セリフを決められたしばいをやるみたいにさ〉


ルイードにそう言うメッシュ。迎えに来たミロンに〈……人間から生まれたくない〉と言っても、自分のことをわからない母親、彼女の望みが何か、どうしたらそれに近づけるだろうかと考えてしまう。そんなメッシュをマルシェの狂気が襲い……。


時間をかけて、いろんな出会いを経験したメッシュ。成長していくメッシュに重なった、この物語のラストは、非常にうつくしかったです。


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            〈あなたが
             そうと
             望むなら

             花にも
             鳥にも
             娘にも

             この姿を
             かえても
             よかったのに

             それは
             愛では
             ないにしろ〉

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by bookrium | 2009-09-23 00:09 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)