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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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春分――『春になったら莓を摘みに』

春分(しゅんぶん)……太陽が春分点を通過する日。真東から昇った太陽が真西に沈む。昼と夜の長さがほぼ同じになるが、日本では昼の方が14分ほど長い。北極点または南極点の観測者から見ると、太陽は地平線と重なるようにして動き、昇ることも沈むこともない。
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写真は梨木香歩のエッセイ集。単行本は2002年に、文庫は2005年に出ました。文庫には「五年後に」という文章が加えられています。美しいカバーの写真は星野道夫。
この人の本を読むのはまだ3冊目だけど、やっぱり距離の置き方がほどよいので好きです。声高にならずに自分の権利を主張でき、慎ましく凛としている。

学生時代を過ごした英国S?ワーデンの下宿先「ウェスト夫人」と、夫人のまわりの人々との交友を綴りながら、「私」は考え続けている。ロンドンを挟んでS?ワーデンの真南のサウス?ダウンズ、スコットランド、トロントからプリンスエドワード島、トロントからニューヨーク?ラガーディア空港、そして日本へと、場所を移りながら。

読んでいて、心惹かれる文章がいくつもありました。

〈人を受け容れる気配にあふれた温かさ、かといって必要以上に好奇心をあらわにしたりしない適度の親密さ。この絶妙な距離感が心地よい。〉
〈日常を深く生き抜く、ということは、そもそもどこまで可能なのか。〉
「子供部屋」

〈あなた方は本当にそのことを話したいの? 私は心の中で呟く。あなた方が本当に、そのことを、話したいのなら私も口を開く。〉
「夜行列車」

〈私が惹きつけられるのは荒れ地に沼地、野山や小川、人の住んだ跡、生活の道具、人が生きるための工夫(信仰を含めて)そういうものだということが、そしてどうやら最後までそういうことに限定されそうだということが、人生の中間地点に差し掛かりしみじみわかってきたところだった。〉
「クリスマス」

〈――僕たち、足して二で割れないもんだろうか。
 ――そうだねえ、全ての人間を足してその数で割ったら、みんな分かり合えるようになるかなあ。
 ――うーん、でもそれもどうかなあ。
 ――分かり合えない、っていうのは案外大事なことかもしれないねえ。〉


〈私たちはイスラームの人たちの内界を本当には知らない。分かってあげられない。しかし分かっていないことは分かっている。ウェスト夫人は私の見た限り、彼らを分かろうと聖人的な努力を払っていた、ということは決してなかった。(中略)自分が彼らを分からないことは分かっていた。好きではなかったがその存在は受け容れていた。
 理解はできないが受け容れる。ということを、観念上だけのものにしない、ということ。〉
「トロントのリス」

こういう経験や物の見方の上に『村田エフェンディ滞土録』が成り立っているんだなぁ、と思う。
作者が師事した児童文学者ベティ?モーガン?ボーエンとは、どんな人なのだろう?

特に印象深いのは、荒野のコテージに暮らすことを考えた時の著者の言葉。

〈生活できるまで生活する、できなくなったら静かに去ります(go away)。〉


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by bookrium | 2009-03-20 21:06 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)