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〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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扉野良人『ボマルツォのどんぐり』

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晶文社から2008年4月に出た本。読みたいなと気になっていた本です。中日新聞サンデー版に掲載された、宇野亜喜良さんによる扉野さんのお父さんとの長い関わりや、この本の完成を祝福していた文章、あとがきにある名前<トビラノラビット>という響きを楽しく気に入ってる様子が印象的でした。

本は5章に分かれ、そのどれもが、今ではあまり読まれなくなったであろう本を、ひとりコツコツと訪ね歩いているような文章です。作家の足跡を訪ねる最後の章が特に好きです。

まずはじめに「能登へ――加能作次郎」を開く。冒頭に引用された、左手の親指を曲げて能登半島を作り自分の故郷を説明する、作次郎の文章。その仕草は子どもの時に自分もしたことがあるので、なんだかひどく、懐かしかった。作次郎は曲げた親指の節、富来町(現志賀町)の漁村の生まれ。著者は作次郎の小説に惹かれ、京都から能登の生家まで訪ねていきます。
加能作次郎は石川近代文学全集の第5巻に入っている(藤沢清造·戸部新十郎も)けど、読んだことはない。本に紹介された、13才で能登を離れて京都に向かう作次郎が、漁舟で海に出て故郷の遠い家並を見、自分の中の我が家や父の様子を間近で見つめるような文章は凄かった(「世の中へ」)。

表紙は澁澤龍彦が日本に紹介したイタリアのボマルツォ庭園の写真。著者は実際にボマルツォまで旅をして、本になぞらえてどんぐりを2個拾う。帯にある〈記憶のお土産〉。

井上靖も携わった「きりん」のことや「寺島珠雄」、未知の人々を知られてよかったです。

巻末の初出一覧を見ると、「辻潤と浅草」が1994年発表で一番古いことに驚く。著者は1971年生まれなので、当時23才位。驚く。


この本の編集をした、中川六平さんのブログ「泥鰌のつぶやき」を時折読みます。家にある晶文社の数冊の本が、この方が編集したことを知りました。
昨年の5月、山口昌男氏の自宅を石神井書林さんと訪ねるくだり、石神井書林さんがショルダーバッグから『ボマルツォのどんぐり』を取り出して、

〈「六さん、サインしてよ」
 「えー、オレでいいの」
 「いいよ」〉


という珍妙なやりとりが好き(その後もいい)。

つい最近2/11では、吉田修一の『悪人』を読んでの目線にぞわぞわしました(吉田修一はデビュー作『最後の息子』しか読んでないけど、西田俊也のコバルトデビュー作『恋はセサミ』が自分の中で被る。オカマの閻魔ちゃんと僕、オカマのリラと男子高校生ユキノ。どちらも空回ったりしてせつない)。
感想の中に、印象的な文がありました。

〈40歳、ですか。がんばってください。
 40歳以下の方々、もです。表面を突き破ってください。小さな説にひたらないでください。それだけに、どこかに、とんでもない書き手がいるのでは。そうも思うのでした。〉


もう世に出てるけど、扉野さんは、〈とんでもない書き手〉に含まれるのだろうなと思いました。

先日、扉野さんは郡淳一郎さんと『Donogo-o-Tonka』創刊準備号を出したそう。気になります。



 

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by bookrium | 2009-02-13 11:26 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)