〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28

<   2010年 02月 ( 8 )   > この月の画像一覧

c0095492_1641812.jpg

すてきな一冊の詩集になりました。
金子彰子さんが岡崎武志さんのブログに自身の詩「二月十四日」を見つけてから再び詩作を始め、この本が形になるまで、1年も経っていないことが凄い。世の中にはこういうこともあるのだな、と思った。
縁あっていただいた私家版『二月十四日』と一緒に、大切にしていこうと思う。
限定214部。カバーは〈破き外して紙片を捨て〉られなかった。
[PR]
by bookrium | 2010-02-24 16:04 | 好きな本 | Trackback | Comments(2)
 〈たまたま地上に
  ぼくは生まれた
  生きる人間として
  デッサンの中に閉じこもって
  日々が過ぎた
  夜々が過ぎた
  ぼくはああした遊びをみなやってみた
  愛された
  幸せだった
  ぼくはこうした言葉をみな話してみた
  身ぶりを入れ
  わけのわからぬ語を口にして
  それとも無遠慮な質問をして
  地獄にそっくりな地帯で
  ぼくは大地に生み殖やした
  沈黙にうち克つために
  真実のすべてを言いつくすために
  ぼくは涯てしない意識のうちに生きた
  ぼくは逃げた
  そしてぼくは老いた
  ぼくは死んで
  埋葬された〉
ギュスターヴ・ル・クレジオ『愛する大地』(豊崎光一訳)

この詩は昔中島義道の本の冒頭で引用されていて、印象に残ってた。でも覚え違いをしていて、〈愛された/幸せだった〉の後は〈ぼくは死んで/埋葬された〉と続くと思っていた。〈ぼくは逃げた/そしてぼくは老いた〉を忘れていた。
室生犀星の「第二の故郷」を読むと、この詩のことを思い出す。


 〈私が初めて上京したころ
  どの街区を歩いてゐても
  旅にゐるやうな気がして仕方なかつた
   (中略)
  
  五年十年と経つて行つた
  私はたうたう小さい家庭をもち
  妻をもち
  庭にいろいろなものを植ゑた
   (中略)
  故郷の土のしたしみ味はひが
  いつのまにか心にのり移つて来た
  散歩にでても
  したしみが湧いた
  そのうち父を失つた
  それから故郷の家が整理された
  東京がだんだん私をそのころから
  抱きしめてくれた
  麻布の奥をあるいても
  私はこれまでのやうな旅らしい気が失せた
  みな自分と一しよの市街だと
  一つ一つの商店や
  うら町の垣根の花までもが懐かしく感じた

  この都の年中行事にもなれた
  言葉にも
  人情にも
  よい友だちにも
  貧しさにも慣れた
  どこを歩いても嬉しくなつた
  みな自分の町のひとだと思ふと嬉しかつた
   (中略)

  自分がゐるとみな生きていた
  みなふとつた
  どれもこれも永い生活のかたみの光沢(つや)を
  おのがじしに輝き始めた
  庭のものは年年根をはつて行つた
  深い愛すべき根をはつて行つた〉




[PR]
by bookrium | 2010-02-23 00:00 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)

日本文学朗読CD集

ユーキャン…(2/15のチラシ)。買いたくないけど気になる。市原悦子の「どんぐりと山猫」とか。中村俊介の宮沢賢治とか、寺田農の「濹東綺譚」「高野聖」とか…。
チラシの表も中もくどいです。天野祐吉の『嘘八百!』を思い出した。
2/15に全国発売のはずが〈すでにお聞きいただいた方から絶賛のお声がぞくぞくと届いております!〉と、60〜80代男女のお声が載ってる。
c0095492_16413688.jpg

c0095492_1641363.jpg

『嘘八百!』シリーズは中学生の時に出会いました。明治〜昭和戦前の広告集。面白い。
作家も1940年以前に生まれた人の方が好きなのが多い気がする。
[PR]
by bookrium | 2010-02-22 16:41 | Trackback | Comments(0)
〈小説を書こうと思い立った日時はピンポイントで特定できる。1978年4月1日の午後一時半前後だ。〉
c0095492_1626037.jpg

〈僕が「そうだ、小説を書いてみよう」と思い立ったのはその瞬間のことだ。晴れわたった空と、緑色をとり戻したばかりの新しい芝生の感触と、バットの快音をまだ覚えている。そのとき空から何かが静かに舞い降りてきて、僕はそれをたしかに受け取ったのだ。〉

二十代の終わり、もう若者とは言えない年代に、神宮球場の外野席でビールを飲みながら野球を観戦していた村上春樹が、小説を書いてみようと無心に思うこのくだりが好きだ。その小説はデビュー作『風の歌を聴け』になる。
自分の生まれた年にデビューしてたんだな、と、最近気がついた。
そして走っている。

〈僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。〉



深く印象に残った部分。
人の少ない早朝の神宮外苑を走っていて日々顔を合わせた、個人個人でジョギングしていた二人の若い選手。彼らは合宿で交通事故に合い、一緒に亡くなってしまう。

〈今でも早朝に神宮外苑や赤坂御所のまわりのコースを走っていると、この人たちのことを折にふれて思い出す。コーナーを曲がったら、彼らが向こうから白い息をはきながら黙々と走ってきそうな気がすることがある。そして僕はいつもこう考える。あれだけの過酷な練習に耐えてきた彼らの思いは、彼らの抱いていた希望や夢や計画は、いったいどこに消えてしまったのだろうと。人の思いは肉体の死とともに、そんなにもあっけなく消えてなくなってしまうものなのだろうか、と。〉


この文章は、雪が降り積もるような静かさがある。


 

[PR]
by bookrium | 2010-02-12 16:25 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)
c0095492_831411.jpg

京都の大学から能登鹿島(無人駅)の実験所へ飛ばされた守田一郎。あまりに辺鄙な能登に驚き、クラゲの研究をしながら、文通武者修行と称し、恋が実るまでパンツを脱がないと決めたマシマロのような友人、独裁的な先輩のお姉様、家庭教師のマリ先生の恋人にヨーグルト爆弾を企む見どころのある少年、「高等遊民になりてえ」と言い子供の時の300円を返せと催促する宇宙飛行士になりたい受験生の妹、〆切に喘ぐ作家森美登美彦先生、憧れの伊吹夏子さん…、勝手に手紙を書きまくるが…!?

全編手紙の本。
能登と京都以外の人が楽しめるかはわからないけど。天狗ハムと和倉温泉。守田一郎の馬鹿馬鹿しさが周りをちょっとだけ動かしてくのがいい。天狗ハムは森見さんにハム送ってあげたらいいと思います(そして和倉温泉総湯は回数券を)。天狗ハムは天狗がトレードマークの、ハムです。
南陀楼綾繁さんの『路上派遊書日記』の中で、新竪町入口の天狗の看板に驚くくだりを思い出した。

〈途中、道端の看板に「天狗乃肉」とあったので、驚いて田川さんに訊くと、「ああ、肉屋ですよ」と。そりゃそうだろうけど、スゲエ名前だな。人魚の肉を食べると寿命が延びるという俗信を思い出した。〉


天狗といったらハム。




[PR]
by bookrium | 2010-02-10 08:31 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

ムーミン谷のビスケット

c0095492_442388.jpg

ミルクとココアがあります。北陸製菓。
c0095492_4423875.jpg

スティンキーは食べ物になる顔じゃない。1/60のラッキーキャラクター『ご先祖様』。
c0095492_4423823.jpg

2箱とも入ってた。
[PR]
by bookrium | 2010-02-08 04:42 | 本のまわりで | Trackback | Comments(0)

雪と白鳥

c0095492_16425989.jpg


田んぼに白鳥。
遠すぎて白鳥だかなんだかわからないが。
橋好きのさえない大学生と恩返しにきた白鳥の恋を描いた、小玉ユキの『羽衣ミシン』は好きな話。

c0095492_18184213.jpg

これは柳田。6月になってもなぜかいた1羽の白鳥。
[PR]
by bookrium | 2010-02-07 16:45 | 奥能登歳時記 | Trackback | Comments(0)
〈さよなら、をんなのひとよ、
 私のおわかれのうたを
 さまざまな形でここにおくる。〉
「とらへられざるままに」抄

c0095492_18293742.jpg


〈あなたがたも 私も
 うしろを見たことがない
 うしろに音となつて
 つぶれた毎日のあることを
 毎日が死体となつて墜ちてゆくのを
 見ようとも知らうともしないのだ
 
 けれど先きの日がきらめいて
 何が起り何が私共を右左するか判らない
 また先きの日のおばしまに
 誰かが思案に暮れ 待ちわびてゐるかも判らぬ
 先きの日を訊ねて見よう
 何処かにあるはずの先きの日〉
「先きの日」抄


〈山のあなたに幸ひ住むと、
 むかしの詩人はうたつたけれど、
 山の向ふも山ばかりが聳え、
 果には波打つ海があるだけだ。
 なにごとも為しえなかつたごとく、
 為しえなかつたために、
 見極めがつくまで生きねばならない。
 街のむかふも街だらけ、
 果には山があるだけだ、
 幸福なんぞあるかないかも判らないが、
 生きて生き抜かなければならないことだけは確かだ。〉
「あさきよめ」抄

c0095492_15515242.jpg

「先きの日」は、〈けれど先きの日がきらめいて〉というのが好き。
[PR]
by bookrium | 2010-02-06 13:00 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)