〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本のある生活です。


by bookrium
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<   2008年 08月 ( 5 )   > この月の画像一覧

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これは庄田春海さんの器。好きな器。
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by bookrium | 2008-08-31 21:21 | | Trackback | Comments(0)
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昭和63年(1988)に発行された小説新潮五月臨時増刊。編集協力は荒川洋治。ADは平野甲賀。
この雑誌は20か21の時に、金沢の広坂にあった頃のDuckbillで買いました。結構日焼けしていたのだけど、中を見たら森茉莉の「贅沢貧乏」が載っていて、中野翠さんの本によく出てくるのはこれかぁと思い、買ったことを覚えています。

中には、1946年発表の高見順「草のいのちを」に始まり、1980年発表の吉行淳之介「葛飾」まで30作が収録されている。買った当時は、森茉莉と川端康成「夫のしない」と宇野千代「幸福」しか読まなかった。特に理由はない。
最近段ボールから見つけ、短篇をちびちびと読んでいるけど、とてもおもしろい。一粒一粒の力が強いのか。もっと早く読みたかった気もするけど、買った当時では理解できなかったのかもしれない。今読むと好きになる小説ばかりだ。山川方夫の「他人の夏」、有馬頼義「空白の青春」、源氏鶏太「たばこ娘」、小山清「落穂拾い」…。

短篇のそれぞれには作家たちの解説エッセイがついていて、それを読むのもおもしろい。井伏鱒二には三浦哲郎、三島由紀夫には後藤明生、有馬頼義には色川武大、石原慎太郎には沢木耕太郎…(この30の短篇の作者の中で今も生きているのは石原慎太郎だけだ)。

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各小説には1葉の挿絵がついていて、それを眺めるのも楽しい。写真は小山清「落穂拾い」に、滝田ゆうが描いた挿絵の一部。小説の始めに〈僕は自分の越し方をかえりみて、好きだった人のことを言葉すくなに語ろうと思う。(中略)誰かに贈物をするような心で書けたらなあ。〉と書かれていて、好きだ。はにかんだような文章。

〈僕には一日中誰とも言葉を交さずにしまうことがある。日が暮れると、なんにもしないくせに僕は疲れている。〉


そういう「僕」がひとりの少女と出会う。高校を卒業してすぐ自分で「緑陰書房」という古本屋を始めた少女。「よくひとりで始める気になったね。」と「僕」が言うと、少女は「わたしはわがまゝだからお勤めには向かないわ。」とさらりと言う。拡大した挿絵は「緑陰書房」と少女の部分。少女を見ていると、つげ義春が描いた古本屋の少女を思い出す。岡崎武志さんの「女子の古本屋」で岡山の〈蟲文庫〉を紹介するのにこの小説が出てくる。
解説エッセイを《含羞の人》野原一夫が書いていて、知らない作家だった小山清を身近に感じる。太宰治宅ではじめて会った時と変わらない〈素朴で、ひかえめで、はにかみやで、やさしい善意を感じさせるその気質は変ることがなかった。〉
最後に引用された、昭和15年に新聞配達をしていた小山清の元へ届いた、太宰治からの最初の手紙。〈原稿を、さまざま興味深く拝読いたしました。生活を荒さず、静かに御勉強をおつづけ下さい。いますぐ大傑作を書こうと思はず、気永に周囲を愛して御生活下さい。それだけが、いまの君に対しての、私の精一ぱいのお願ひであります。〉
〈周囲を愛して〉には傍点がふってある。きっと、小山清は愚直に太宰の手紙を守って生活していったに違いない。「緑陰書房」の均一本の中から本を買い、〈僕はいまの人が忘れて顧みないような本をくりかえし読むのが好きだ。〉という「僕」の姿は、何ともいい。

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川端康成「夫のしない」の挿絵は原田治。ちょっと意外。このあやうい小説は好きだ。内容は口にすると陳腐で色褪せてしまう。冒頭と結末とタイトルがリンクしていて、いかにも、短篇小説という感じ。読んだ時の味が好き。

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森茉莉の「贅沢貧乏」の挿絵はスズキコージ。何度読んでも楽しい。牟礼魔利(むれマリア)の部屋へ行って、アネモオヌや〈淡く綺麗なものたち〉を見てみたいなぁ。

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耕治人の「この世に招かれてきた客」の挿絵は山高登。耕治人は名前だけ知っていて、今回初めて読んだ。山高登は初めて名前を知ったのだけど、この絵はこの小説にとても合っていてせつない。貧しく亡くなった詩人の千家元麿について、入院してから考え続ける「私」。彼の人生、彼の家族、彼の残した詩、彼の神、彼をこの世に使わした「神」について。


  私達は神に招かれて
  此世へ来た客だ
  不服を言はずに
  楽しく生きるものには
  大きな喜びがある


そう言った千家が亡くなり、幸福な彼の葬儀の様子を描いて小説は終わる。みな生前の千家の話をし、笑って、この「客」を神の元へ帰すのだ。
この解説エッセイは野坂昭如が書いている。「喜んで去る」というこの文章も好き。

〈耕治人は、(中略)「旅人」として、ふつうに世の中を、旅していく。私小説というものは怖ろしいもので、もっとも、百篇の世界的文学を、小品ひとつで吹っとばしてしまう、これをしも力とはいえない、妖かしに近い、呪術めいたものを備えている。〉


耕治人の小説を読むと、野坂は〈さっぱりと、清々した在り方に憧れ〉廃棄衝動に駆られ、あれやこれや片付けようとし、積み上げ、虚無感に落ち入る。

〈とても、耕の、「旅人」になりきれないせいであろう。何もかも色あせてみえると、月並みな言葉でいっておこう。ぼくの死を、笑ってくれる者が一人でもいてくれたら、小説家として、ぼくは満足である。自分を片づけられないから、つまり、ぼくはゴミを処理しているだけのことだ。ゴミの中には文字も入る。〉


そんな野坂昭如が好きです。


この中には、大アンケートとして78人が選んだ短篇小説ベスト3が紹介されている。色んな人がいて、選んだ理由を読むのもおもしろい。読んだことのない短篇ばかり。アンケートで出た作品の文庫で読める小説リストが一緒に載っているのが、うれしい。梶井基次郎「檸檬」、ロアルド·ダール、アーウィン·ショー、サローヤンを上げる人が結構いる。
隆慶一郎が牧野信一「ゼーロン」を上げ、藤沢周平が五木寛之「さらばモスクワ愚連隊」を上げているのが、ちょっと意外だった。水上勉が、私も好きな太宰治「満願」を上げていて、お、と思う。水上勉の小説はまだ読んだことない。昔読んだ山田詠美との対談はおもしろかった。その山田詠美は、J·ボールドウィン「ソニーのブルース」、T·ウィリアムズ「欲望と黒人マッサージ師」、ヘンリー·ミラー「愛と笑いの夜」を紹介。その解説は78人中一番短く、〈読むのも書くのもだあい好き。だって、短いんだもん。〉と書いていた。


眺めていると、この雑誌は日焼けしているせいもあるけど、売り物にせず手放さないかもしれないな、と思う。短篇小説たちの描いた世界が新鮮で。その作家、背景、解説を書いた作家との関係、挿絵の画家、アンケートの短篇小説と作家の作品世界との関係…いろいろ興味が出てくる。しばらく楽しめそう。
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by bookrium | 2008-08-18 03:41 | 好きな本 | Trackback | Comments(0)
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by bookrium | 2008-08-15 13:17 | 奥能登歳時記 | Trackback | Comments(0)

最低にして最高の道

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新潮文庫の伊藤信吉編『高村光太郎詩集』。いつ買ったか記憶がないが、たぶん松浦弥太郎さんの本を読んだ影響で買ったのだと思う。
写真のクウネル6号では松浦弥太郎さんが岩手·花巻の高村山荘を訪ねた文章が載っている。松浦さんは14歳のときに出会い、衝撃を受けた「光太郎さん」に呼びかけ、「最低にして最高の道」を紹介しています。

文庫の詩集には好きな詩がいくつもあった。「へんな貧」とか「百合がにほふ」とか。前に読んだ時より、はっとする。


  この心は棄てられない。
  いくら夢だときめてみても
  頑としてそこに居る。

    (焼けない心臓)


  智恵子は見えないものを見、
  聞こえないものを聞く。

  智恵子は行けないところへ行き、
  出来ないことを為(す)る。

  智恵子は現身のわたしを見ず、
  わたしのうしろのわたしに焦がれる。

  智恵子はくるしみの重さを今はすてて、
  限りない荒漠の美意識圏にさまよひ出た。

  わたしをよぶ声をしきりにきくが、
  智恵子はもう人間界の切符を持たない。

   (値(あ)ひがたき智恵子)


一番好きなのは「智恵子抄」の中の「亡き人に」の最後のところ。今までこの詩に気付かなかった自分に後悔。何度も何度も読み返す。高村光太郎は本当はあんまり好きではなかったけど、この詩の最後の2行が好きです。


  私はあなたの子供となり
  あなたは私のうら若き母となる

  あなたはまだいる其処にいる
  あなたは万物となって私に満ちる

  私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
  あなたの愛は一切を無視して私をつつむ


 

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by bookrium | 2008-08-12 21:19 | 好きな本 | Trackback | Comments(0)

荻原魚雷「古本暮らし」

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晶文社から出ているこの本。奥付を見ると2007年5月5日初版、6月5日2刷となっていました。早い。
この本の帯は装画の柔らかい雰囲気と合っている。

本の中で著者は、
〈生まれ年のわからない人の本はあんまり読む気がしない。自分と同世代かどうか、年上なのか年下なのか、わたしはけっこう気になるほうだ。/できれば出身地も知りたい。〉

というのでプロフィールを見たら、ちゃんと〈一九六九年三重生まれ〉と書いてあり、なにかおもしろかった。自分も気になるので(ちょうど10歳上だ)。
この本にはそんな著者の古本の暮らしが綴られています。この人の名前はいくつかの書物系ブログを読んでいると、ヒョイヒョイと顔をのぞかせるので、どんな人だろう?どんなことを書いているのだろ?と興味がありました。

生活するスペースには限りがあるから本を売って減らしたり(また買ったり)。出会った本たちについて語る目線が、なんだかいいなぁと思いました。著者のように若い一時期に切実に本を読んだ時期がある人は、懐かしく思うのかもしれない。
知らない本や知らない人たち。知ってる本の別の顔など、読んでて楽しい。声高にならない文章だから?
この中で紹介されていた尾形亀之助と谷郁雄の詩がとても好き。二人とも初めて名前を知った。読んでよかったなあと思う。



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by bookrium | 2008-08-02 21:20 | 読んだ本 | Trackback | Comments(3)