〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


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カテゴリ:読んだ本( 29 )

『走れ!移動図書館』

〈衣食住が大切なのは疑いようもない事実です。
 心はどうでしょう。〉

ちくまプリマー新書の鎌倉幸子『走れ!移動図書館』。
内戦を逃れタイに移住した難民を支援し、図書館活動を行った国際協力NGOの公益社団法人シャンティ国際ボランティア会。その「走れ東北!移動図書館プロジェクト」
震災後の4月に東北入りし、移動図書館の準備の過程、7月に運行し始めてから仮設住宅での本と人の関わり。阪神・淡路大震災の経験をふまえた「緊急救援時における一〇ヵ条」。

被災した各地の図書館、本屋の被害についても書かれていて、特に陸前高田の図書館の被害に衝撃を受けました。全て本が流失した図書館や、大槌町・野田村の図書館の壊滅状態、職員7人全員死亡または行方不明で壊滅状態・把握不能の陸前高田。図書館の隣には約100人が避難しつつ生存者が3人だった避難所。

仮設住宅で本を必要とする人。それに応えて本を選ぶ人。再開した本屋で本を買うこと。

〈本はチカラがある。そう人は信じているから本はこの世に存在し続けているのではないでしょうか。〉

震災後、石川近代文学館の絵本を集めて送るよびかけを見て、少ないですが預けました。
あの絵本はどこかで読まれて、よろこぶ子がいるだろうかと、時々思っていました。

〈衣食住は、人間が生きる上で必要不可欠であることは疑いようがありません。ただ衣食住は生きるための手段で目的ではありません。
 生きる目的を考えるときに、アイディアやアドバイスをくれたり、辛い時にそばにいてくれるのは家族や友人だけではなく、本もその役割を担えます。〉

この本は図書館で出会いました。
移動図書館という活動を知って、この先いつまで続けて、どんなふうになっていくかはわからないですが、本の可能性があって読んでよかったと思います。



走れ!移動図書館: 本でよりそう復興支援 (ちくまプリマー新書)
鎌倉 幸子
筑摩書房
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by bookrium | 2014-03-29 23:30 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

『みちくさ道中』

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〈ただ、自分の仕事が、誰かの貴重な時間のかたわらにある可能性に行き当たって、製品や作品を世に出すということの責任のようなものを改めて突きつけられた気がした。あなたの建てた家が、作った家具が、パジャマが、食器が、絵が、楽器が、誰かの最期のときと共にあるかもしれない。それに恥じない仕事をする、と覚悟を持って臨むのもまた、「働く」ということの大事な構えなのだろう。自分のやりがい、ばかりじゃなくて。〉「シンカン先生」木内昇『みちくさ道中』より


 
みちくさ道中
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木内 昇
平凡社
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by bookrium | 2014-03-13 22:00 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

『楽しい小皿』

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貸してもらった青幻舎の『楽しい小皿』。
おもしろい皿がたくさんあります。
中でも大津絵節絵皿が好きです。


 
楽しい小皿
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三好 一
青幻舎
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by bookrium | 2014-03-12 16:12 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

『器つれづれ』

白洲正子『器つれづれ』撮影は藤森武。
著者が最後に手がけた本。写真も豊富で面白かったです。
好きな文がいくつかありました。

青山二郎の言葉。
〈「美なんていうのは、狐つきみたいなものだ。空中をふわふわ浮いている夢にすぎない。ただ美しいものがあるだけだ。ものが見えないから、美だの美意識などと譫言を吐いてごまかすので、みんな頭に来ちゃってる」〉

〈「わかるなんてやさしいことだ。むずかしいのはすることだ。やってみせてごらん。美しいものを作ってみな。できねえだろう、この馬鹿野郎」
 そういいながら、傍らのコップを指先で叩いてみせる。
「ほら、コップでもピンと音がするだろう。叩けば音がでるものが、文章なんだ。人間だって同じことだ。音がしないような奴を、俺は信用せん」〉
(『遊鬼 わが師 わが友』)

〈既に言い古されているが、『当麻』という作品の中に、次のような言葉がある。

  美しい「花」がある、「花」の美しさといふ様なものはない。〉
(小林秀雄の骨董)

〈この間、河合隼雄先生の対談集を読んでいたら、自分というものをどこまでも深く掘り下げていくと、ついには地下水に達し、その地下水というのは、底のほうでみんなつながっている、とあった。〉(著者・談。『窯庭遊話』)


白洲正子が使っていたいろんな器の写真がありました。中でもむぎわら手の器が好きです。


器つれづれ
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白洲 正子 藤森 武
世界文化社
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by bookrium | 2014-03-07 23:11 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

美しいもの

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土の上にはまだ雪が。

〈「土は美しすぎる」と、リーさんは言う。自然のままでも美しすぎるので、そこに手を加えて、アートにはできない。だから自分の作品に「土味」は、出したくない。自然は、美しいけれど、アートではない。
  (中略)
 〈いつもの道を歩いて ちいさな花をみつけた 今朝 すべてがあまりに美しいので この花を君にあげよう 理由もなく何かを美しいと思うこと 僕はそのことにただ感謝しているんだ〉
 「誰かを、何かを、美しいものとして見るという人間の持つ感情そのものが、美しいものの根源です。そのものを愛する人が、それを美しいものとして見たいのではないでしょうか。美しいものとは何なのか、まだ私も探し続けています」〉


赤木明登『美しいもの』より。
ドイツで陶芸をしている李英才(リー・ヨンツエ)さんについての文章の一部。
〈〉内の詩は、ドイツ語の古い詩。いいなと思いました。

ドイツの工房を引き継いだリーさんが、職人たちに形を意識させて作る過程が興味を引きました。
同じ形を20個挽いて、その中から良いと思うものを一つだけ選び、選んだものを見本にまた同じ形を20個挽かせる。その中からまた選び、同じことを繰り返していく。

〈「器を作る」というのと「音楽を奏でる」というのは、似ている。楽器も歌もある程度練習すれば、とりあえず音は出るようになる。でも、それで音楽にはならない。土と音は、ともにとてもやわらかく敏感な素材で、土や楽器を直接手で触ることで、自分の心臓の鼓動、呼吸を直接伝えることができる。だから、ちょっと呼吸の仕方を変えるだけで形や音が変わってくる。そのことを体で理解すると同時に、美しい形と音を志向する目と意志と情熱を保ち続けることによって、初めて土は器に、音は音楽になる。リーさんは、土の持つそんな直接性がやきものにとって大切なことだと教えてくれた。〉

ここの文章は、とっかかりのようなもの、それが沈殿する感じがします。

〈土にこだわり、作りにこだわり、焼きにこだわる〉という順を、前に人に言われたことがあります。
「土は美しすぎる」という言葉は、そういうことを考えさせられました。


美しいもの
美しいもの
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赤木 明登
新潮社
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by bookrium | 2014-02-28 22:52 | 読んだ本 | Trackback | Comments(2)
2011年のムック。以前店頭で買うか迷ってやめた本で、図書館で借りました。
木工や漆塗り、ガラス、陶芸などの作家が紹介されています。

以下は自分の覚え書きのようなもの。

辻和美さんのガラスの雫のような作品は、昔購入しました。
それは私が買える値段で、初めて購入した「作品」でした。

安藤雅信さんは、〈34歳のときに、陶芸を基礎からやり直そうと決意。これでダメなら、自分はもう終りだと覚悟を決めた〉という文章に惹き付けられました。
型で作ってたのも初めて知りました。

赤木明登さんは、〈「自分のなかに深く深くもぐっていくと、その底に見えてきたのは、弱くて、小さくて、いいかげんで、移ろいやすく、はかない何か。けっして、強くしっかりしたものではなかったんです。」〉という言葉が印象に残ります。
紹介されていた、総持寺そばにある深見海岸で見つけた石が好きです。拾いに行きたいです。自然の作ったものはいいなと思うきれいな色の石でした。


こういう本はきれいにまとめられている感じがして、参考になる面と素直に見られない自分がいます。


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by bookrium | 2014-01-21 17:36 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

『雪と珊瑚と』梨木香歩

この本は装丁が好きです。
表紙も、読むと〈珊瑚〉はこんな女性なんだろうなと思い、開くと淡いブルー、花布の淡いピンク、スピンはグレーとか。

離婚した21歳の珊瑚が幼い娘の雪を抱えて店を開くストーリーは、保険証もなく自宅出産の過程もこんなに上手くいくのかな?と思いました。
硬い感じを受ける珊瑚が関わる人たちや食べ物でほぐれていくようでした。大根のダシと塩のスープ、小玉のタマネギとコンソメのスープがおいしそう。

後半の一通の手紙が、読んでいて感じる否定的な考えや違和感を見通してるようで、モヤモヤの行き場がないなと思いました。アレルギーのあるこどもの母親に、「メロンパンもどき」を渡す。珊瑚が良かれと思ってすることが、店側では困ることがわからない、そういうところがモヤモヤしました。
聖フランシスコの言葉〈施しはする方もそれを受ける方も幸いである〉、施すことと施されることが、何度か出てきます。

気になった一節。

〈新しい人生とは、赤ん坊のそれなのか、自分のそれなのか、珊瑚は分けて考えることをしなかったが、産むことでようやく、社会や、そこで生きていくことと、ちゃんと関われる気がした。今までずっと、「本当に起こっていること」の外側で生きている気がしていた。〉

〈自分の人生は、なんだかモグラに似ている、と思っていた。さしたる夢も野望もなく、とにかく目の前の土を掻きわけて、なんとか息のできるスペースをつくっていく、それの繰り返し。もっと大きな、なんというのか「ビジョン」というのか、人生の目標みたいなものが、自分にはない、〉

〈昔、鍵をかけなかったことに対する苦い思い出が、珊瑚にはある。だがそのことはもう、思い出さないことにしている。そんなことは自分の人生を左右するほどのことではない。〉

〈「どんなに絶望的な状況からでも、人には潜在的に復興しようと立ち上がる力がある。その試みは、いつか、必ずなされる。でも、それを、現実的な足場から確実なものにしていくのは温かい飲み物や食べ物――スープでもお茶でも、たとえ一杯のさ湯でも。そういうことも、見えてきました。」〉

本をほとんど持ってない珊瑚が、家を出るとき持って出た一冊の本、石原吉郎の詩を読んでみたくなりました。


雪と珊瑚と
雪と珊瑚と
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梨木 香歩
角川書店(角川グループパブリッシング)
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by bookrium | 2013-12-28 16:57 | 読んだ本 | Trackback | Comments(2)

山川方夫『軍国歌謡集』

〈私は人間が進歩したり、性格が一変したり、というようなことはあまり信じてはいない。〉

〈そして、たぶん、私は一生あのときの自分から他人にはなれないのだ、と思う。〉

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〈「幻影は幻影だ。もちろんです。しかしですね、そういって整理をして、人間からその幻影を取っちゃったら、いったいなにが残りますか? 人間は、しんまで物質のつまった石ころと同じになっちゃうじゃあないですか。そんなことでいいわけはない。人間が石ころと同じだなんてのはウソだ。人間はね、幻影をつくりだす能力と、それを信じる勇気があるからこそ、人間なんです。(後略)」〉山川方夫『軍国歌謡集』


 
(003)畳 (百年文庫)
林芙美子 獅子文六 山川方夫
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by bookrium | 2012-11-20 22:51 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)

『やがて哀しき外国語』

〈いちばんの問題は「自分にとって何ができるか、自分は何をしたいのか」ということを見つけることだと思う。別の言葉で言い換えれば、どこまで自分の疑問を小さく具体的にしぼり込んでいけるかということになるかもしれない。〉

〈ゼルダの絵を見ていると、僕はいつも芸術というものの意味について深く考え込んでしまうことになる。ゼルダの絵の多くは、素晴らしいインスピレーションを秘めている。そこに何か非常に大事なものが表現されているのだということを僕らはひしひしと感じ取ることができる。その絵が大きな才能のある人間の手によって描かれたのだということを知ることができる。しかしそれらの絵はきわめて芸術的であっても、真の意味での芸術作品にはなりえてない。そのふたつの世界を隔てるのはほんとうに薄い壁なのだ。しかしそこには壁が厳然としてある。そしてゼルダはその壁を越えてはいない。〉
「アメリカ版・団塊の世代」

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〈十年というのはけっこう長い歳月だが、なにごとによらず、僕はいろんなことを身につけたり、解消したりするのに他人より長い時間がかかる。〉
「誰がジャズを殺したか」

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写真合ってないけど。ゼルダはゼルダ・フィッツジェラルドのこと。
村上春樹のエッセイは好きです。




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by BOOKRIUM | 2010-06-15 00:39 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)
〈小説を書こうと思い立った日時はピンポイントで特定できる。1978年4月1日の午後一時半前後だ。〉
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〈僕が「そうだ、小説を書いてみよう」と思い立ったのはその瞬間のことだ。晴れわたった空と、緑色をとり戻したばかりの新しい芝生の感触と、バットの快音をまだ覚えている。そのとき空から何かが静かに舞い降りてきて、僕はそれをたしかに受け取ったのだ。〉

二十代の終わり、もう若者とは言えない年代に、神宮球場の外野席でビールを飲みながら野球を観戦していた村上春樹が、小説を書いてみようと無心に思うこのくだりが好きだ。その小説はデビュー作『風の歌を聴け』になる。
自分の生まれた年にデビューしてたんだな、と、最近気がついた。
そして走っている。

〈僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。〉



深く印象に残った部分。
人の少ない早朝の神宮外苑を走っていて日々顔を合わせた、個人個人でジョギングしていた二人の若い選手。彼らは合宿で交通事故に合い、一緒に亡くなってしまう。

〈今でも早朝に神宮外苑や赤坂御所のまわりのコースを走っていると、この人たちのことを折にふれて思い出す。コーナーを曲がったら、彼らが向こうから白い息をはきながら黙々と走ってきそうな気がすることがある。そして僕はいつもこう考える。あれだけの過酷な練習に耐えてきた彼らの思いは、彼らの抱いていた希望や夢や計画は、いったいどこに消えてしまったのだろうと。人の思いは肉体の死とともに、そんなにもあっけなく消えてなくなってしまうものなのだろうか、と。〉


この文章は、雪が降り積もるような静かさがある。


 

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by bookrium | 2010-02-12 16:25 | 読んだ本 | Trackback | Comments(0)