〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


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カテゴリ:当世本二十四節気( 57 )

夏至――『六月』

夏至……太陽が天球上で夏至点に達し、北半球の昼の長さが一年で一番長く、夜が一番短くなる日。
北回帰線上の観測者から見ると 夏至の日の太陽は、正午に天頂を通過する 。

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〈海の青が薄くなると、それだけ、空の青が濃くなってゆく。
 街に青のスーツが目立ってくる。それに従って、山野の青が消えてゆくのだ。
 六月――、移動する青の一族。その隊列を横切るために、私は旅に出なければならぬ。〉
『井上靖全詩集』より
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by bookrium | 2014-06-21 00:54 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
芒種……稲や麦など芒のある穀物の種蒔きの時期。蟷螂や蛍が現れ始め、梅の実が黄色くなり始めるころ。


〈私は昨日、或る人が自分の能力を精一杯花ひらかせた、その成果を、展開して見せている展覧会を見に行きました。私はその人が三、四年前、その仕事を始めたときのことを知っています。その人はただ一直線に自分の道に進んだのです。それは、はた目には、まるで狂気じみた自信のように見えました。この人の自信とあなたのとは、全く別種の自信です。いつも平常心をもって、深く潜行する、ゆるぎのない自信。これがあなたの自信です。あなたはそれを最初から持っていたように、私には思われます。〉

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〈私は固く信じているが、人の中には、駄目な人は一人もいないものである。人と人との相違は、その人が自分の好い芽をひらかせるような気でいるか、或いは摘み取って了うような気でいるか、その違いである。
 誰にでも、その人の持っている芽、と言うものがある。その芽を太陽のよく当たるところへ出して、ときどき水をやり、肥やしもやっているか、或いはそこら中へおっぽり出して、まるで構わないでいるかで、勝負は決まる。〉宇野千代『行動することが生きることである』より

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by bookrium | 2014-06-06 00:00 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

当世本二十四節気

カテゴリの〈当世本二十四節気〉の中は、内容がゆるく分かれています。

はじまり

2009年2月から2012年5月までは小説がメイン。あまり書かなかった年もあります。

2013年4月から2014年3月までは詩。

2014年4月からは短文。


いつもその時その時の思いつきで本を選んでいます。季節やその時の気持ちに、ゆるく沿っています。その頃亡くなった作家を取り上げた時もありました。
もっと知っていたら、取り上げる作品の幅があるだろうなと、いつも感じています。

書いた中で好きなのは、『遠いアメリカ』『夏の読書』『晩年』です。



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by BOOKRIUM | 2014-05-11 20:12 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
立夏……太陽の光がいよいよ強くなってきて、夏の気立ちが昇るころ。この日から立秋の前日までが夏。


〈私は誰に教わったわけでもない。兄も又、知っていたわけではない。私達は共に生きて行くのに助け合わねばならなかった。助け合うという気持さえなかったかも知れない。成長して離れて一人ずつの人間になる前に、兄は死んだ。〉

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〈男を愛し子を産んだ。子を産むことで、私は与えるだけの喜びを知らされた。それは私が創ったわけではない。子供が誕生と共に私に与えたものであった。
 愛した男を失った。それは私の中で失われ、失われたものをまじまじと見つめる地獄を知った。あらゆる宗教はやがて失われていく愛をおそれた人間の知恵が創ったのかも知れない。
 ゆるやかに崩壊していった家庭を営みながら、私は一冊の絵本を創った。一匹の猫が一匹のめす猫にめぐり逢い子を産みやがて死ぬというただそれだけの物語だった。
「一〇〇万回生きた猫」というただそれだけの物語が、私の絵本の中でめずらしくよく売れた絵本であったことは、人間がただそれだけのことを素朴にのぞんでいるという事なのかと思わされ、何より私がただそれだけのことを願っていることの表われだった様な気がする。〉「二つ違いの兄が居て」佐野洋子



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by bookrium | 2014-05-05 21:15 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
穀雨……春のあたたかい雨が降り、穀類の芽が伸びて来る頃。

〈《わたしは死んでしまったのね。神様、わたしは死んだのですね》と呟きました。〉
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〈その時はじめて、雨がやんでいることに気づきました。静寂がわたしたちの周りを包んでいたのです。その静けさは神秘に満ちた深い幸福感をもたらし、死そのものと形容したくなるような完璧な状態でわたしを包み込みました。〉
ガルシア・マルケス 井上義一訳『青い犬の目』より


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by bookrium | 2014-04-20 01:09 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

清明――『柿の種』

清明……桜や草木の花が咲き始め、万物に清朗な気が溢れて来る頃。 

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〈宇宙の秘密が知りたくなった、と思うと、いつのまにか自分の手は一塊の土くれをつかんでいた。そうして、ふたつの眼がじいっとそれを見つめていた。
 すると、土くれの分子の中から星雲が生まれ、その中から星と太陽とが生まれ、アミーバと三葉虫とアダムとイヴが生まれ、それからこの自分が生まれて来るのをまざまざと見た。
 ……そうして自分は科学者になった。
 しばらくすると、今度は、なんだか急に唄いたくなって来た。
 と思うと、知らぬ間に自分の咽喉(のど)から、ひとりでに大きな声が出て来た。
 その声が自分の耳にはいったと思うと、すぐに、自然に次の声が出て来た。
 声が声を呼び、句が句を誘うた。
 そうして、行く雲は軒ばに止まり、山と水とは音をひそめた。
 ……そうして自分は詩人になった。〉
寺田寅彦「短章 その一」


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by bookrium | 2014-04-05 00:03 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
春分(Vernal Equinox)……太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる日。

〈たんぽぽ町に朝がやってきた。
 たんぽぽ町とは、東京のはじっこにある町で、そこにはちいさな川がながれていて、その川ぞいの道に、かわいいたんぽぽが、たくさんさきあふれていることから、みちゆく人や、そこでくらす人から、いつのまにか、たんぽぽ町とよばれるようになったところだ。〉

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〈おんなのこは、このたんぽぽ町がだいすきだった。ここで暮らしていると、自分をすきになれるからだ。そして、まいにち、しごとをして、ここに帰ってくると、ほっとするのだった。〉

〈おんなのこは、まいあさ、たんぽぽ町にかざられている「HOME」の文字をみながら、しごとにでかけていった。そして、夜になれば、「HOME」をいう文字を見ながら、家へかえってくる。
 たんぽぽ町には、今日もやさしい夜がやってくる。そして、まいにちやさしい朝がやってくる。〉
松浦弥太郎『くちぶえカタログ』より
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by bookrium | 2014-03-21 18:48 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

啓蟄――『晩年』

啓蟄……大地が暖かくなり、冬の間地中にいた虫(蟄)が穴を開いて(啓いて)動き出す日。一雨降るごとに気温があがってゆき、春に近づいていきます。春雷が一際大きくなりやすい時期です。

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〈僕は君を呼びいれ
 いままで何処にゐたかを聴いたが
 きみは微笑み足を出してみせた
 足はくろずんだ杭同様
 なまめかしい様子もなかった
 僕も足を引き摺り出して見せ
 もはや人の美をもたないことを白状した
 二人は互の足を見ながら抱擁も
 何もしないふくれっつらで
 あばらやから雨あしを眺めた〉
室生犀星『晩年』より




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by bookrium | 2014-03-06 00:40 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)

雨水――『雪』

雨水……雪溶けて雨水ぬるむ。もう雪は降りません、降るなら雨。積もった雪も溶け始めます。

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〈ラジオは、裏日本一帯の猛吹雪を報じている。陸奥湾にも、能登半島の海岸にも、東尋坊のきりぎしにも、いま、雪はしんしんと降っているのだ。細長い日本の国の半分の、大きい家にも、小さい家にも、草にも、木にも、ラッセル車にも、雪はこやみなく降っているのだ。
 こんな晩、ぼくはいつも想像する、どこかの海峡の底ふかく、真赤な花が、美しくひらいているのを。この雪の下にひれふしたあらゆるもののこころが、そこで一つにかたまって、じっと堪え、忍び、春を待っているのを。〉『井上靖全詩集』新潮文庫

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by BOOKRIUM | 2014-02-19 18:29 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)
立春(Beginning of Spring)……初めて春の気配が現れてくる日。この日以降初めて吹く南寄りの強風を「春一番」といい、以降、2回目、3回目を「春二番」「春三番」と言います。

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〈風は北風 冬風
 誰を誘いに来たのか
 子供は風車まわし まわされ
 遠くの空へ 消えてゆく

 小春おばさんの家は
 北風が通りすぎた
 小さな田舎町 僕の大好きな
 貸本屋のある田舎町

 小春おばさん 逢いに行くよ
 明日 必ず逢いに行くよ

 風は冷たい北風
 はやくおばさんの家で
 子猫をひざにのせ いつものおばさんの
 昔話を聞きたいな

 小春おばさん 逢いに行くよ
 明日 必ず逢いに行くよ〉
新潮文庫 井上陽水『ラインダンス』より
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by bookrium | 2014-02-04 19:33 | 当世本二十四節気 | Trackback | Comments(0)