〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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長田弘『なつかしい時間』

〈読書というのは、振り子です。たとえ古い本であっても、過去に、過ぎた時代のほうに深く振れたぶんだけ、未来に深く揺れてゆくのが、読書のちからです。〉「古い本も読もう」

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岩波新書から出ている、詩人長田弘の『なつかしい時間』。
NHK「視点・論点」で17年語った言葉。亡くなった妻への50年目のラブレター。自らの詩5篇。
1995年8月に始まり、言葉の変化、本というもの、風景の中の人間、世紀の変わり目、繰り返す主題のなかに、2011年の大震災が起こります。
人へ、風景へ、自分へ、時間を見つめ、まなざしを向ける。
あたりまえの時間が、もっとも新鮮でなければならない、ということ。
そして2012年7月「海を見にゆく」という題で、この本は終わります。

はっと惹かれる言葉、考えがたくさんありました。
著者の詩、紹介される詩人、芥川龍之介の『蜜柑』など、著者の紹介する本も読んでみたくなります。
去年やその前からあまり本を読めずにいたのですが、ひさしぶりに、いい本を読んだな、という充足感がありました。
読んでいて、いろんな風景、眺めが浮かびます。
自分のいる風景。風景の中の自分。

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〈日々のあり方を変える。そうすることで、へつらいのない言葉を可能にするような「箇中」の生き方、一人の生き方をもとめた。良寛がのぞんだのは、世にむけて発信する言葉ではなく、自ら生きる方法としての言葉でした。
「発信する」ばかりの人は「自ら称して有識と為す」人だ、と良寛は言います。ですから「諸人みな是となす」。けれども「却って本来の事を問えば、一箇も使う能わず」。大事なのはどんな言葉か。言いつのる言葉ではない言葉、受けとめる言葉のあり方です。〉
「受信力の回復を」

〈人生を理解するというのは、人生に対する視点を選びとること、自分の立つ位置を選びとるということです。〉「他山の石とする」

〈本を開くということは、心を閉ざすのではなく、心を開くということです。〉「本に書いて親しむという習慣」

〈わたしたちは今日、じぶんが風景のなかでじぶんの感受性は育ってゆくということを、ひどく実感しにくいところで生きているのではないでしょうか。人の価値観を育むもの、支えるもの、確かにするものとしての風景のなかに身を置くということ、風景のひろがりのなかでじぶんの小ささを思い知るということが、いつか見失われてしまっているために、人間がひどく尊大になってしまっている。そのことの危うさを、いつも考えます。〉「風景という価値観」

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著者はあとがきで、〈のぞめるなら、バッハの平均律クラヴィーア曲集の四十八曲のように、いくども繰りかえされる主題をたのしみつつ読んでいただければ。〉と書いています。
手元に置いて、その曲集を聴きながら、繰り返し読みたくなる、そんな一冊です。

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〈人というのは、生きている本だと思うのです。ですから、死んだ人間は、誰もが「一冊の本」をのこして死んでゆく。〉「死者と語らう」




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by bookrium | 2017-01-10 15:56 | 好きな本 | Trackback | Comments(0)