〈bookrium=book+aquarium〉本の海を回遊するブックリウムの、本と陶芸のある生活です。


by bookrium
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室生犀星と詩

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〈雪がふると子守唄がきこえる
 これは永い間のわたしのならはしだ。
 窓から戸口から
 空から
 子もりうたがきこえる。
 だがわたしは子もりうたを聞いたことがない
 母といふものを子供のときにしらないわたしに
 さういふ唄の記憶があらうとは思へない。
 だが不思議に
 雪のふる日は聴える
 どこできいたこともない唄がきこえる。〉
(子守唄)


写真は新潮文庫、福永武彦編『室生犀星詩集』。24冊の詩集の中から、年若い読者を想定して福永武彦が187編を選んでいるためか、この本に入っている詩はみな読みやすいです。けれどやさしい詩ではない。

生後間もなく、加賀藩の足軽組頭をつとめた父と女中の母から離され、犀川ほとりの雨宝院の住職の内縁の妻の子として届けられた照道こと犀星。9才の時に実父が死に、実母も行方不明になる。高等小学校を3年で中退し、13才で金沢地方裁判所の給仕として働き始め、そこで上役から俳句を学び詩作も始める。ほぼ独学ではじめた詩を生涯続け、〈からだぢゆうが悲しいのだ。〉と74才で亡くなる1週間前まで、遺作の「老いたるえびのうた」に書き残した。

〈ゆきふるといひしばかりの人しづか
〉という犀星の句が好きだけど、幾つの時に詠んだのか知らない。

気に入った詩はいろいろあって、〈私のゆく道は万人のこない道だけれど/自分によくにた宿命を負つた人の来る道だ〉という「まだ知らない友」もいいなと思う詩。

父や金沢という故郷を失い、東京での家庭が〈深い愛すべき根〉をはって〈私〉を抱きしめる「第二の故郷」。

他にもいいなと思うのは、「はる」「春から夏に感じること」「永遠にやつて来ない女性」「女人に対する言葉」「人」…〈日本のゆふぐれは柔らかい〉という「日本のゆふぐれ」「紙」「誰かをさがすために」「あさきよめ」「初めて「カラマゾフ兄弟」を読んだ晩のこと」などなど多数。

故郷のことを、〈うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても/帰るところにあるまじや〉とまで言っても、犀星の詩は金沢の時雨や山や川、ちいさな生き物へ目をやる。雪の詩も多かった。


〈その赤ん坊を見たまへ
 棄てられし赤ん坊を見たまへ
 赤ん坊の赤き肌を見たまへ
 遂に死なざりし赤ん坊を見たまへ
 遂に生き抜きし赤ん坊を見たまへ
 赤ん坊のまなこを見たまへ〉
(赤ん坊)



 
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by bookrium | 2009-02-12 16:29 | 北陸の作家 | Trackback | Comments(0)